XPeng Motors(小鵬汽車)は4月14日、同社で3番目の生産モデルであるXPeng P5を発表した。※本記事は現時点での速報ベースとなります。

同社はすでにスマートSUVであるG3、そしてスマートセダンであるP7を販売している。P5はEVをより普及させるための家族向けモデルとして位置づけられており、G3・P7に比べて、自動運転機能が強化されている。

自社開発のフルスタック自動運転システムXPILOT3.5を搭載した量産車となり、初めて都市道路にナビゲーションガイドパイロット(NGP)機能を搭載する。

自動運転システムXPILOT3.5

同社はこれまでのG3・P7では、LiDARを使わずに超音波センサ・HDカメラ・ミリ波レーダーのみでADAS機能を実装していた。今回のXPILOT3.5ではついにLiDARを採用することを明らかにした。

XPILOT3.5アーキテクチャでは、2台のLiDARユニット、12個の超音波センサー、5台のミリ波レーダー、13個の高解像度カメラ、1個の高精度測位ユニット(GNSS + IMU)が使われる。LiDARには以前から発表されていた通り、LivoxのLiDARが採用される。

前回記事:中国の新興EVメーカーのXpengがLivoxのLiDARを2021年生産モデルへ採用

また、XPILOT3.0との違いとして、ナビゲーションガイドパイロット(NGP)機能が都市部でも適用されることになったことも挙げられる。P7プレミアムで搭載されているXPILOT3.0は高速道路のみでNGPを使うことができ、ドライバーが設定したナビゲーションルートに基づいて、A地点からB地点までの自動ナビゲーション支援運転を実行する。制限速度の調整や、高速道路への自動切り替え、最適化された車線選択、自動追い越し等が可能となっている。今回のXPILOT3.5では、高速道路以外の都市部でも、こうした自動運転支援機能が使えるようになる。

LivoxのLiDARを採用

LivoxはXpengの発表に合わせて、自動車グレードのLiDARである「HAP Lidar」を発表。LivoxのLiDARは「非反復走査方式」と呼ばれる。

浜松ホトニクスが開発をした6つのカスタムフォトダイオードダイと、6つのアバランチフォトダイオードによって構成される3つの回転プリズムによって立体的に走査を行うものだ。同社によると、通常の水平方向の走査では、線と線の間がセンシングされないままとなり、それを埋めるためにデータ演算が膨大となる。同社の方式であれば、一気に同じ領域内を走査するため、計測する時間が増えるにつれて描写密度が高くなるという(積分時間が増加するとFOVカバー率が増える)。

このHAP LiDARの検出距離は最大150m(反射率10%)、120°の水平FOV、最大0.16°×0.2°の角度分解能、144本の線に相当する点群密度を備えている。このLiDARを使ったADASシステムは、高速道路の運転支援、都市交通渋滞での接近車両、夜間運転、カーブでのアダプティブクルーズ、自動駐車支援などのシナリオを処理することができる。

Livoxは、自動車向けのLiDARを効率的に開発するために、70を超える自動車グレードのテスト項目を実施できるテストセンターを設立。最先端の試験装置を導入し、開発してきたという。今回発表されたHAPは、こうした項目を全てクリアしたものとなっている。さらに大量生産・低コスト化を実現するために、組み立て生産ラインを自動化し、1時間あたりのユニット数を40個/時間に増やすことにより、HAP生産ラインは最大20万個の年間生産能力を実現した。

スマートコクピットと全音声インタラクション

今回のP5ではコクピットのデザインも一新されている。

P7においては、横長のタッチパネルがハンドルの前に配置されていたが、今回のP5においては、前方座席の真ん中に15.6インチの大型画面タッチパネルを配置。そして、スマートコクピットのOSとなる、XmartOS3.0プラットフォームは、フルシナリオの全音声インタラクションを実現する。

スマートコクピットの様子

画像クレジット:Xpeng

航続距離はNEDCで600kmという情報も

現時点(4/15)では、航続距離についての公式のアナウンスは無いが、中国メディアのMoneyballによると、NEDCで600kmという。(実走行距離に近いEPA換算だとおおよそ420km)

なお、XpengはLFP(リン酸鉄リチウムを正極に用いたLIB)を既存車種で採用することを発表しており、低コストで安全性の高いLFPを評価しているようだ。P5についてはまだバッテリーがLFPかどうかは明らかにされていない。

前回記事:XpengがLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーを採用した車種を発表

P5については、この後の上海モーターショー4月19日に詳細なスペックなどの発表があるようだ。

なお、中国の主要スマートEVベンチャーの車種スペックについても参考までにつけておく。こちらの記事より:中国EVベンチャーの電気自動車販売動向

CHIBAMOBIL.RU、各社発表、EqualOceanより筆者作成

自動運転の動向に興味がある方は、こちらの記事でカリフォルニア州が発表した2020年離脱レポートを分析しているので参考。

参考:(特集) カリフォルニア州の自動運転レポートを解説 ~Waymo・Cruise・ZOOX・中国勢等~


ー 技術アナリストの目 -
まだ速報ベースなので、この後の上海モーターショーでの発表を受けて本記事内容は変わる可能性がある点ご注意ください。XpengもLiDARを採用したことで、これでNIOのET7に続きLiDARの正式な搭載が発表されました。背景には、高速道路だけでなく都市部での自動運転適用をにらんでいること、OTAによる将来的な自動運転機能の拡張のため、ということが挙げられると思います。Livoxのように、ある程度の実装上使えるレベルのスペックで低コスト量産が可能な企業が、まずは中国の自動運転・EVベンチャーで採用され、育成されて徐々にハイスペックのLiDARへ移行する、といった可能性のシナリオも考えられ、今回の動きは興味深いです。

中国の自動運転ベンチャーのロングリスト調査や、自動運転のプロジェクト動向の調査に興味がある方はこちら。

グローバル技術動向調査:詳細へ


参考文献:

1) Empowering Xpeng P5: Livox Officially Releases HAP Lidar

2) XPeng New LiDAR-Equipped P5 a Game-Changer for Smart EVs