2021年4月15日、米国小売り大手企業のウォルマートは、米国自動車OEMのGM子会社である自動運転ベンチャーのCruiseに出資したことを発表した。今回の出資は今年1月に実施されたCruiseの資金調達ラウンドに追加で参加するもの。

今回のウォルマートに出資により、Cruiseが今回の資金調達ラウンドでのバリュエーションは300億ドル以上、調達金額は27億5000万ドル(約2992億円)となり、その内、ウォルマートの出資額は7億5,000万ドル(約816億円)と見られる。

前回の資金調達ラウンドに関する記事はこちら

参考:GM子会社の自動運転Cruiseへマイクロソフトが出資

配送サービスと自動化に注力するウォルマート

ウォルマートは今回の出資の目的を、「高速、低コスト、スケーラブルなラストマイルデリバリーエコシステムの開発に向けた取り組みを支援するもの」としている。

ウォルマートは最近、配達サービスの拡大に力を入れてきた。2021年4月には、配達サービスが可能な店舗は2,800以上に拡大し、コロナウイルスの影響による背景もあり、同月だけで配達サービスを利用した米国の世帯は、米国の全世帯の65%以上になるという。

同社はこうした配達サービス拡大の流れの中で、自動運転企業との提携を積極的に進めており、実証プロジェクトを通してラストワンマイル自動配送の最適なテクノロジーを探っている。

昨年11月にはすでにCruiseと提携し、アリゾナ州スコッツデールでパイロットプロジェクトを実施することを発表していた。顧客は地元の店舗へ注文し、Cruiseの全電気式自動運転車による配送を通して、非接触で商品を受け取ることができる。

ウォルマートは他にも、自動運転車両を開発するNUROとも2019年から提携して、テキサス州ヒューストンの店舗で実証実験を行っているが、こちらの取り組みは現在はストップしているという報道もある1)

ウォルマートは今回の出資についてこう述べている。
「この投資は私たちの目印です。これは、自動運転車のメリットをお客様やビジネスにもたらすという私たちの取り組みを示しています。この新しいテクノロジーの開拓に向けて、GM、ホンダ、マイクロソフトなどと一緒に、Cruiseのすでに印象的なパートナーおよび投資家のエコシステムに参加できることをうれしく思います。」

(プレスリリースはこちら:参考1参考2参考3


ー 技術アナリストの目 -
元々はNUROと提携をしていましたが、今回Cruiseに巨額な金額の出資をすることになりました。NUROの車両はあくまで近距離の配送がメインなので、住み分ける可能性もありますが、下記の参考文献で挙げた記事によるとNUROの実証プロジェクトはストップしているという話も出ています(実際に、提携の発表からずっと両社から新しい情報が出ていないですね)。NUROではカバーしにくい中距離の配送も含めてCruiseの技術を使った方が広範にカバーできると判断したのか、今後、どのような形でCruiseの自動運転技術を使うのか、注目したいところです。

参考文献:

1) The Supply Side: Walmart continues autonomous delivery testing; some pilots paused, TBP