リチウムイオン電池市場向けのシリコン・炭素複合材料を開発・製造しているGroup14 Technologiesが、同社初となる商業規模の製造工場を米国で立ち上げたことを、4月13日に発表した。

シリコン・カーボン複合材料を製造

Group14はリチウムイオン電池のアノードに使うシリコン材料に特化して、開発・製造を行うベンチャー企業だ。2015年に設立された同社は、米国ワシントン州シアトル近郊に拠点を構えている。

リチウムイオン電池では、負極に従来のカーボン系材料から、シリコン系材料に変える動きが一部の先端技術を使うで電池で起こっている。負極の素材にシリコンを活用することは、グラファイトを使う場合に比べて大きく電池容量を増やし、高速充電を実現できる可能性があり、注目されている。一方で、シリコンを使うとリチウムイオンの挿入と脱離によって起こる体積膨張と収縮が大きく、電極を破壊する可能性があること等の課題がある。テスラはシリコン粒子をポリマーコーティングで覆い、カーボン材料に分散させることで解決しようとしていることが、昨年のバッテリーデイで触れられた。

Group14は100%シリコンではなく、シリコンとカーボンの複合材料を開発し、提供している。同社の技術はSCC55™と呼ばれ、グラファイトとの任意のブレンド比に対応することが可能となっている。

画像クレジット:Group14
Group14のフラグシップであるシリコン・カーボン負極材料SCC55

同社CTOのRick Costantino氏はこう述べている。
「我々は、チームの豊富な商業製造経験を活用して、プロセス開発とコスト設計を最初から優先してきました。これは、品質、パフォーマンス、安全性を犠牲にすることなく、可能な限り迅速に事業をスケーリングするための鍵です。SCC55 ™の製造プロセスは、最初から迅速かつ効率的に拡張できるように設計されていました。このアプローチにより、私たちのテクノロジーを、家電製品や電気自動車などにすぐに提供して支援することができます。」

家電大手や自動車メーカーにすでに提供中

同社の商業工場からは、すでにSCC55™を世界のトップ家電および自動車メーカーに提供しているという。特に、アジアにおいて顧客パイプラインを拡大させていることを明らかにした。

また、EVにおいては82Ah自動車用バッテリー向けで、従来負極材料へのブレンドか、または完全な代替を行うかの検証プロセスの真っ只中にあり、負極材をSCC55™に完全に代替する場合は、現在のEVの航続距離を最大50%増加することができると主張している。

同社の生産量は急速に拡大しており、今年末までに生産量は2倍になると見込んでいる。今年後半にはREC Silicon社のモーゼスレイク工場に併設する形で、第二の商業製造プラントを稼働させる。

BASFや昭和電工も出資

Group14 Technologiesには、TDK子会社のATL(Amperex Technology Limited※1)、BASF、Cabot Corporation(米国の機能性化学メーカー)、昭和電工、SKマテリアルズら、複数の大手企業が出資している。

※1 なお、このATLの車載向け部門が独立して、現在LIBで有名なCATLが設立されている。

2020年12月にはSKマテリアルズがリードインベスターでシリーズBを実施。1,700万ドル(約18億円)の資金を調達した。

(今回参考のプレスリリースはこちら


ニッケルリッチ正極やシリコン負極、リチウム金属などの先進リチウムイオン電池に関する技術動向の全体像を知りたい方はこちら。

参考:(特集)車載向け次世代電池の技術開発動向① ~先進リチウムイオン電池~


ー 技術アナリストの目 -
純100%シリコンではなく、カーボン材料に混ぜる形でシリコンの利用が始まっており、テスラやダイムラーなどはすでに負極にシリコン材料を使っており、フォルクスワーゲンも今年のPower Dayでシリコンを使った負極を使っていくことが明らかにされました。そうした中で、Group14の立ち位置は良いポジショニングとなっており、今後生産量が拡大していくことが期待されます。

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