2021年4月19日、中国企業のBYDは、上海モーターショー2021で電気自動車用の次世代プラットフォーム「e-platform 3.0」を正式にリリースした。また、XDREAMコンセプトカーも合わせて発表した。

次世代EVプラットフォーム e-platform3.0

このプラットフォームはインテリジェンス、効率、安全性、美観という4つの主要な利点を提供する高性能EVのために設計された。コアコンポーネントをさらに統合および標準化するだけでなく、まったく新しいボディ構造、デジタルおよび電気アーキテクチャ、および改良されたBYDが開発する車両オペレーティングシステムを構築している。

拡張可能かつ、アップグレードも可能で、開発者にオープンとなるこのプラットフォームを使うことで、新機能開発のためのIteration(反復)を従来2か月かかっていたものを2週間に短縮することができるという。

また同社によると、このe-platform3.0は、新しいヒートポンプ技術を標準装備し、ドライブシステム用に新たにアップグレードされた8-in-1モジュールを搭載し、全体の効率を89%以上にしている(※1)。

※1 全体の効率とあるが、何に対しての効率かが不明であるものの、恐らく電気自動車のバッテリーから供給される電気に対して、実際に活用できるエネルギーの効率であると想定される。

そしてe-platform 3.0を搭載した電気自動車は、時速0マイルから時速60マイルまでの加速時間がわずか2.9秒となっている。また、航続距離は最大600マイル(965km=約1,000km)を実現する。さらに、800Vの急速充電を搭載。わずか5分間の充電で、90マイル(144km)の航続距離を実現する。

(補足)ただし、この800V急速充電はあくまで車両側の話であって、急速充電設備が整備されていないと当然上記のスペックは実現しない。なお、ポルシェ・タイカンも、800Vの急速充電に対応しており、バッテリーは93.4kWhという仕様になっている。わずか20分で、航続距離400km分を充電可能だ。また、今回航続距離は約1,000kmとアナウンスされているが、WLTPなのかNEDCかEPAか、どの基準での航続距離かは不明である。同社が過去NEDCベースで発表を行っているところを考えると、今回もNEDCモードでの数値なのではないかと推測される。さらに、これはあくまでe-platform3.0を使った車両に最大限バッテリーを積んだ時の航続距離と予想され、実際に販売する車での航続距離がどうなるかは不明だ。

そしてe-platform 3.0で搭載されるバッテリーはBYDが開発・製造するブレードバッテリーだ。LFP(リン酸鉄リチウム)を使った次世代電池であり、LFPの特徴である安全性を活かしつつ、デメリットのエネルギー密度が低い点を解決するために、電池パッケージの構造を見直し、モジュールを廃してセルを直接パッケージにする、いわゆる「セルトゥパック(Cell to Pack)」を採用している。

これまで、メルセデスベンツ、トヨタ、滴滴出行(DiDi)はBYDと提携してEVを開発しており、e-platform3.0は引き続き業界全体に公開される。近い将来、e-platform3.0を搭載したEVが市場全体で使用される予定だという。

コンセプトカー「X-DREAM」

また合わせてBYDは、コンセプトカー「X-DREAM」を発表した。

ボディは独特の色使い、インテリアは中国独特の漆職人技を駆使し、全体的に優雅さと高級感を兼ね備えたフォルムとなっている。Chinese Knot(中国結び)という伝統工芸をデザインの要素に取り入れ、車のライトの形状はテクノロジーと文化の融合を示すという。

BYDのX-DREAMコンセプトカー(上海モーターショー2021)
shaoxian liu氏の動画への直リンク

参考:同社プレスリリース


ー 技術アナリストの目 -
BYDはEVの販売が好調で、ブレードバッテリーも含めて勢いが良い状況です。今回、e-platform 3.0では800Vの急速充電に対応してきたあたり、ポルシェアのタイカンから始まった800V対応の流れを引き継いでいるように思えます。GMのフルサイズピックアップトラック「ハマー」でも最大電圧800V・最大出力350kWの超高速充電を可能にしており、大容量バッテリーを積むEVでは徐々に800V対応が始まっています。