中国の大手自動車メーカーのSAIC(上海汽車集団)と、IT大手のアリババが立ち上げた新しいプレミアムEVブランド「IM」は、現在行われている上海モーターショーの記者会見で、IM初の量産モデルL7の先行販売を開始したと発表した。

SAICとアリババの合弁事業IM

IMは「Intelligent in Motion」の略であり、2021年の1月にSAICとアリババが合弁で立ち上げたプレミアムEVブランドとなっている。上海張江ハイテクパーク開発株式会社も含む3社の合弁会社が立ち上げられており、フラッグシップセダンとSUVの2車種がすでに発表されていた。

顧客をデータパートナーとする新しい施策

今回、上海モーターショーで先行販売を開始したL7はフラグシップセダンで、408,800元(約686万円)の価格となっている。バッテリーは93kWhを標準装備とし、航続距離はNEDC基準で615kmだ。

L7はNVIDIAのOrin SoCを搭載していることがNVIDIAから発表されている。Orin SoCチップは1つで最大254TOPSの処理が可能であり、IMが開発するL7と、将来発売される予定のSUVにはこのチップが2つ搭載されている。コンピューティングアーキテクチャを一元化・統合し、IMが開発する車両は、高度なソフトウェア機能を実現できるという。定期的にソフトウェアアップデートを取得するスマートフォンと同じように、IMが開発するソフトウェア定義の車両も同じように動作する。

そして今回のL7では、IMは車両データに関する新しい施策を打ち出している。

この先行販売期間で購入をするユーザー3,000人を「エンジェル投資家」と位置付けており、この3,000人にはユーザー特典が付く代わりに、IMのパートナーとして車両のデータを提供してもらう。なお、特典とは、例えば無料の生涯サブスクリプション、無料の生涯アップグレードを備えたIMADインテリジェントドライビングフル機能パック、7日間の返金保証などとなっている。

この初期ユーザー達は、IMによるデータ駆動型製品の開発とブランドの進化に向けた貢献を行う代わりに、その貢献に応じた機能フィードバックを享受できる。

例えば、エンジェル投資家認定を受けたユーザーは、購入後少なくとも5,000kmを運転した後に、次世代のレーザーレーダー(LiDAR)インテリジェント運転システムが発売された1年後に、新システムへアップグレードできるようになる。また、3年間定期的に運転をしたユーザーは、ユーザーの走行データに基づいて、電気自動車のバッテリーを次世代の電池に交換することができる。

同社はこう述べている。
「開発競争をリードするという論理に従い、会社とユーザーの間に共創的な関係を築いていきます。IM MotorsがAuto Shanghai 2021に初めて登場したことで、IM Motors L7の高級スマートカー体験の価値が実証されただけでなく、ユーザー固有の権利の新時代の到来を告げることになります。」

参考プレスリリースはこちら


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参考:中国EVベンチャーの電気自動車販売動向


ー 技術アナリストの目 -
初期の購入ユーザーに特典を付けて、データパートナーとするという新しい施策を打ち出したL7でした。このデータの内訳には言及していませんが、例で言及されているのは走行データとなっています。こうしたデータを集めて新しいアプリケーション開発を行っていくということになるのでしょうか。テスラは自社ユーザの走行データを収集して自動運転機能の開発に活用していることをすでに明かしていますが、実環境における走行・車両データの収集は、機能開発においては非常に重要で、こうしたデータ観点でのIMの今後の動きに注目したいと思います。

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