視線追跡で脳震盪を診断する技術を持つベンチャー企業のOculogicaは、ウェアラブルデバイス開発のために米国陸軍医学研究開発コマンド(USAMRDC)から2m$(2.1億円)の助成金を得たと発表した。

FDA認定済みの視線解析装置

OculogicaはミネアポリスVAメディカルセンターの脳神経外科医であり、ミネソタ大学工学部の准教授のUzma Samadani博士によって2013年に設立された米国ベンチャー企業である。同社は、視線の動きを解析し、脳震盪を客観的に診断する装置EyeBOXを開発し、すでに米国FDAの承認を得ている。

このEyeBOXは据え置き型の装置で、医療機関に置かれて使われる。脳震盪の疑いのある人が診察を受ける際に、従来は患者の状態から診断を行い、脳に異常が疑われる場合にはCTで検査を行うが、脳震盪自体はCTでは検知ができるわけではない。そこで同社は客観的に脳震盪を診断するサポートツールとして、この視線追跡によるアルゴリズムを開発した。5歳から67歳までのユーザーを対象とし、わずか4分間のテストで診断することができる。

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今年後半から2022年にウェアラブル化

Oculogicaは5月18日に、ウェアラブルバージョンの技術を開発するために、米国陸軍医学研究開発コマンド(USAMRDC)からの2m$の助成金を受け取った。

同社CEOのRosima Samandani博士はこう述べている。「脳震盪は年間1,000万人以上に影響を及ぼしているため、負傷した場所でも患者が検査にアクセスしやすくすることが非常に重要になる可能性があります。」

脳震盪はスポーツなどでも話題になることが多いが、その場で状態を診察し、必要に応じて病院に検査へ行く必要がある。脳震盪を早期に発見できるほど、良い結果が得られる可能性が高くなるという。

同社の技術のウェアラブル化により、高速で非侵襲的なウェアラブルフィールドテストが実現する。この開発作業は今年後半から2022年の初めに開始する。

オーストラリアでも医療機器認定を受ける

同社は5月4日に、オーストラリアの治療製品局(TGA:Therapeutic Goods Administration)においても、医療機器として認証を受けたと発表。脳震盪の診断を行うベースラインツールとして、オーストラリアでも利用できるようになった。今後はすでに販売承認を得ている米国・ニュージーランド・オーストラリアで製品を展開していく。

 

今回参考のプレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
視線追跡・解析によって脳震盪を診断する補助ツールということで、かなりニッチですが、独特のポジションを形成しています。今後ウェアラブル化されるということで、スポーツや軍事分野で使われることが期待されています。市場が膨大にあるという訳ではないですが、着実にニーズがありそうな領域であり、短期的にマネタイズしながら技術が進展していくことが期待されます。