5月13日、韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は、フランス国立科学研究所(CNRS-CRHEA)と共同で開発したメタマテリアルを使った超軽量ナノフォトニクスベースのLiDARデバイスについて、Nature Nanotechnologyに招待論文として掲載されたことを発表した。

従来の可動部が機械式のLiDARは価格が高く、現在多くの企業が可動部が少ない、または可動部の無いソリッドステートLiDARを開発している。

参考:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~

研究チームが開発した超精密LiDARデバイスは、可動部無しのメカレスとなっており、ビームステアリング部分にメタマテリアル(位相変化材料)を適用してビームステアリングを行う。また、点群生成デバイスを適用することで面でスキャニングを行うフラッシュタイプのLiDARとし、また光源デバイスの統合とスケーラブルな製造などを実現するナノフォトニック技術を適用している。

POSTECHの研究チームが開発したナノフォトニクスベースLiDARは、自動運転車だけでなく、インテリジェントロボット、ドローン、3Dパノラマカメラ、CCTV、拡張現実プラットフォームにも適用できると説明している。

なお、このメタマテリアルとは、現在通信アンテナやレーダーなどの様々な用途で注目されている材料だ。メタマテリアルは、物質の電磁気学(光)的な特性を人工的に操作した疑似物質と言われており、その構造によって光を任意の方向に屈折させることができる。例えばビルゲイツから出資を受けているLumotiveは、液晶メタサーフェスというメタマテリアル材料を使った独自のビームステアリング技術を開発し、ソリッドステートLiDARの実用化を狙っている。

研究チームを率いるJunsuk Rho教授はこう述べている。
「現在、研究チームは、超軽量メタサーフェスベースの化合物を使ったLiDARシステムを開発するために、いくつかの追跡調査を行っています。この研究が成功すれば、手頃な価格で超高速かつ超精密なLiDARシステムを製造できることを楽しみにしています。」

 

今回参考のプレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
メタマテリアルはLiDARのみならず5G関連でも非常に注目されており、そうした技術を使うベンチャー企業も登場しています。大学研究機関でも積極的に研究されており、今回のようにソリッドステートLiDARへの適用も期待されます。今後、追跡調査を行い研究を続けていくということなので、どこかの段階でPOSTECHの技術も実用化に向けてベンチャー企業がスピンオフされてもおかしくありません。