5月17日、アーバンエアモビリティのベンチャー企業であるVolocopterは郊外と都市部を繋ぐ中距離輸送用の新しい機体「VoloConnect」を発表した。

元々は短距離都市内移動(エアタクシー)がターゲット

2011年にドイツで設立されたベンチャー企業であるVolocopterは、これまで人口密度の高い大都市内での短距離移動向けエアタクシーを狙った機体「VoloCity」を使って、シンガポールやドバイで実証フライトを行ってきた。このVolocityは乗員2名を運ぶもので、あくまで飛行距離は35km範囲となっていた。

同社はこの3月にシリーズDで約258億円もの資金を調達している。調達した資金を活用し、VoloCityの認証プロセスを推進し、初期の商用ルートを確立する予定だ。

参考:VolocopterがシリーズDで約258億円を調達、NTT・コンチネンタルも参加

中距離用途にも進出

そして、今回発表されたVoloConnectは、郊外と都市部を結ぶ長距離用モデルとなっており、最大4名の乗客を、時速180km(最大250km/h)の速度で運ぶことができる。飛行距離は100kmとなっている。

(補足)なお、この100kmとはどのくらいかを日本で考えると、東京から100km圏内となると、千葉全域をカバーし、茨城県の水戸、栃木県の宇都宮、群馬県の高崎など、主要なエリアを多くカバーするような形となる。ただし日本はかなりの範囲をカバーできるように見えるが、例えば米国の様に国土が広い場合は、サンノゼとサンフランシスコがおおよそ100km弱であるが、必ずしも日本の様に主要都市間を繋ぐことは難しい。あくまで1つの郊外のハブと1つの都市を結ぶような導線となるケースが多いと想定される。

Volocopterは今年に発表したホワイトペーパーで、同社がUAMの市場セグメントを以下の様に距離で分類しており、従来のVoloCityは都市内移動(35km圏内)を対象としていた。今回のVoloConnectは近郊から都市部を繋ぐ輸送手段として同社が対象とする市場を拡大する動きとなる。

Volocopterがホワイトペーパーで発表したUAMの距離別セグメント

Volocopterホワイトペーパーを元に筆者作成

機体はリフト(揚力)とプッシュ(推進力)のハイブリッド設計となっており、これは固定翼とローターという、小型航空機とヘリコプターの良いところを組み合わせたものとなっている。ちなみに、この固定翼とローターを組み合わせたハイブリッド設計は、中国のEHangが最近発表した最新機体シリーズのVTでも採用されている。

なお、現時点での飛行距離は前述したように最大100kmとしているが、あくまで現在のバッテリーによるものであり、飛行距離はバッテリーによりある程度制約を受けていることが伺える。

VoloConnectは複数のスケールされたプロトタイプを飛ばしており、フルスケールのプロトタイプのテストに向けて急速に開発を進めているという。

 

同社HPはこちら


アーバンエアモビリティの世界のベンチャー企業動向を整理したものはこちらも参考。

参考:(特集) 空飛ぶ車・アーバンエアモビリティの世界ベンチャー企業動向


ー 技術アナリストの目 -
先日EHangも、これまで短距離用の機体のみでしたがVT30の発表をしたことで、中・長距離市場にも参入することが明らかになりました。Volocopterも同じ流れとなっており、短距離から始まって中距離まで今回ターゲット市場を拡げています。この領域は他にもArcherやVRCOらも100km市場を狙って機体開発を進めていますが、今後、1社で複数の市場セグメントをカバーできるように機体のバリエーションを増やしてくるとも考えられ、競争は激しくなりそうです。

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