血圧モニタリング技術を開発しているCardieXは、様々な医療機関や研究機関で利用される、中心血圧を非侵襲で測定する技術をグループで保有している。そのCardieXは、臨床用血圧モニタリング技術を、家庭用の健康ウェアラブルに適用しようとしている。

CardieXは米国カリフォルニアとオーストラリアにグループで拠点を構える企業だ。ATCORというグループ企業が展開しているNcBP(Noninvasive Central Blood Pressure:非侵襲中心血圧測定)のソリューションを使ったモニタリング技術を開発している。

参考:BtoCを狙うレーダーベースウェアラブル血圧モニタリングのCardieX

CardieXは5月17日、今後12か月の間に複数の新しいデバイスとデジタル製品を複数市場に投入する予定であることを発表した。

1つ目は家庭用血圧測定デバイスのCONNEQT「Pulse」だ。このデバイスは同社が開発したSphygmoCor®技術を搭載しており、通常の上腕で測る血圧だけでなく、中心血圧(心臓付近の大動脈血圧のこと)も測ることができるのが特徴だ。中心血圧は、心臓病や高血圧によって悪化する腎臓病や脳卒中などのリスクを見るのに上腕より適しているとされ、臨床用ではすでに同社も測定ソリューションを提供してきた。このPulseはFY2022のQ2でローンチする見込みとなっている1)

(補足)なお、SphygmoCorとは、ATCOR部門が開発した中央動脈圧力波形解析アルゴリズムであり、中心動脈圧波形と脈波伝播速度の測定値、波形分析(たとえば、増強指数、増強圧、反射波の大きさ)による動脈硬化の評価を行うことができる。

また、合わせてCardieXは、新しい健康ウェアラブルであるCONNEQT Bandも開発していることを明らかにした。このCONNEQT Bandは臨床グレードの心拍を測定することができる他、血圧(中心血圧も)、動脈年齢、心臓への負荷などを算出することもできるとしている。

同社が公開したスケジュールによると、2022年Q2にFDAへ申請手続きを行い、上手くいけば2022年Q4から販売を開始するという。

このCardieXは2018年12月にJDA(共同開発契約)を締結したBlumioのレーダー技術を使ったウェアラブル血圧センサーを開発している。これは従来の医療機関用ではなく、一般消費者が健康モニタリングのために利用するデバイスを作ることを狙った開発となっていた。今回発表されたCONNEQT Bandがどのような技術を使っているのかはまだ開示されていないが、このBlumioのレーダー技術がベースになっている可能性がある。

ただし、PPGや類似する光学デバイスによる非カフ血圧測定については、FDAの認定を受けたデバイスはまだ存在せず(電極パッチと組みあわせたものは存在)、認定をクリアすることは簡単ではない可能性がある。

 

同社HPはこちら


2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。

参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~


ー 技術アナリストの目 -
上記でも述べましたが、大変興味深い一方で、現時点でウェアラブルデバイスの精度を示すファクトはまだ出てきておらず、非カフ血圧モニタリングのFDA認定のハードルはかなり高いことから、現時点ではまだよくわかりません。ただし、同社は元々がATCORの医療用から出発しており、バックグラウンドはかなりしっかりしていると考えられ、今後の進展が期待されます。

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参考文献:

1) CardieX Corporate Update & CONNEQT Brand Launch