FMCW LiDARを開発しているドイツのベンチャー企業であるScantinel Photonicsが、シリーズAの資金調達ラウンドを実施したことを発表した。

出資をしたのはスウェーデンのトラック・バス・重機の大手メーカーScaniaのCVCであるScania Growth Capitalだ。資金調達額は7.5m€(約10億円)と見られる。

シリコンフォトニクスFMCW LiDAR

Scantinel PhotonicsはFMCW(周波数連続変調)のLiDARを開発している。同社はスイスの光学製品大手のカールツァイスからのスピンオフベンチャーで、2019年にドイツのウルムに設立された。

このFMCW LiDARは、従来のToF方式とは異なり、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇するように変調を行った電波を連続的に照射し、送信波と反射波の周波数差から距離を求める。特徴としては、ToFに比べて感度を高くすることができ、高解像度を実現しやすい。また、他のLiDARや雨や霧といった外部環境の影響を受けにくいこともメリットだ。

従来は発信部と受光部のモジュールが分かれているLiDARであるが、同社はシリコンフォトニクス技術により、わずか8cm未満の1チップに光学コンポーネントを集約。小型でスケーラブルな設計となっている。光源には1,550nmのレーザーを使う。可動部は無い、ソリッドステートLiDARとなっている。

なお、このシリコンフォトニクスの技術については世界の半導体業界をリードするベルギーの研究機関IMEC(Interuniversity Micro-Electronics Centre)との共同研究で実現している。IMEC自身もLiDARの研究開発は行っており、AutoSenseで同社の取り組みについて語っている。

AutoSense公開の動画への直リンク

Scantinel PhotonicsのLiDARは最大300mまでの対象物検知(反射率前提は不明)、そして2,000,000ptsの高精細ポイントクラウドを取得することができる。

 

今回参考のプレスリリースはこちら


MEMS LiDARやFMCW LiDAR、フェーズドアレイなど、方式別の技術動向や特徴について知りたい方はこちらも参考。

参考記事:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~


ー 技術アナリストの目 ー
Scantinel PhotonicsがシリーズAに到達しました。現在の技術開発状況はあまり開示していないですが、シリーズAなので、ようやく初期プロトタイプでのPoCは完了し、製品化を意識したLiDARユニットの設計を行い、性能が出るかどうかの第二段階のPoCに向けた開発資金なのではないかと思います。自動運転ベンチャーのAuroraもOURSを買収したように、FMCW×1,550nm×1Chip(シリコンフォトニクス)というのは現在のトレンドで、競合ベンチャーも取り組んでいます。そのため、実用化を早めることができるか、または用途×機能で差別化するか、何かしらのポジショニングが必要そうです。日本の大手企業からすると、後発でも関係が作りやすいフェーズとも言えるでしょう。

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