世界的な人口拡大と食肉需要の高まり、そして環境負荷軽減などを背景として、代替肉(人工肉、植物由来肉・培養肉)が注目されている。矢野経済研究所が発表しているところでは、世界の代替肉市場は2020年に2,572億円、2030年には1兆8,723億円と推計されている。そして、この領域には数多くのスタートアップが技術開発に取り組んでいる。

プレミアム細胞培養肉の技術開発

Orbillion Bioはその中の1社だ。同社は2019年にシリコンバレーで創業されたベンチャー企業である。プレミアム細胞培養肉の技術を開発している。

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同社が独自に技術開発しているバイオプロセスにより、商業規模の食品生産に最適な細胞を迅速に分離、スクリーニング、および選択することができ、サンプルから最終製品まで競合の5倍の速さで進めることができるという。結果として、細胞培養肉のコストを低減することができるというのが同社の主張だ。

一般に細胞培養肉の生産工程は、①細胞採取→②細胞培養→③培養肉化という3つの工程を経るが、特に課題として大きいのは細胞培養であり、この培養スピード次第で培養肉の生産コストが大きく変わる。同社は創業メンバーのバイオ医薬品の経験と、プロセスエンジニアリングと合成生物学の知見から、この課題の解決に取り組んでいる。

この3月に、同社は初めての公開試食イベントを開催した。サンフランシスコのベイブリッジを見下ろすイベントスペースで、細胞培養された3つの文化遺産肉 (和牛、野生のヘラジカ、羊) を紹介した。同社は、バイソン、ヒツジ、シカなどの商品化が難しい様々なおいしい伝統的な肉に焦点を当てていることも特徴だ。

4月にシードで5m$を調達

同社は2021年4月にシードラウンドの資金調達で5m$(約5.5億円)もの資金を調達している。一般的なシードラウンドの規模としては大きい部類に入る。

同社はPre-Seedで有名なアクセラレーターであるY Combinatorによって支援を受けている。Y CombinatorはITテクノロジー・Webサービス系への投資が圧倒的に多いが、実は植物ベースの代替食品スタートアップであるEclipse Foods、Kuleana、Rebellyous Foods、細胞ベースのシーフードミートを開発するShiok Meatsなど、複数の代替タンパク質への投資を行っており、そのポートフォリオの1社としてOrbillion Bioも加わった形となる。

同社は2023年にパイロット規模の生産を開始するという技術ロードマップを計画している。今回調達した5m$の資金を使い、生産コストを削減し、最初の製品である上質な和牛の細胞培養生産をパイロット規模に引き上げていく。

 

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ー 技術アナリストの目 -
代替肉ですが、昨年筆者も米国でインポッシブルフーズの代替肉バーガーを試食させていただきました。味としては可も無く不可も無く、と言うところで、バーガーの様にきちんと味付けがされていれば個人的には特に気にならない味だったのを覚えています。今後10年間で1兆円以上の新規市場が立ち上がると言われるこの市場で、数多くのスタートアップが立ち上がっているおり、本メディアでもどこかのタイミングで特集を組んでみたいと思います。

【世界の培養肉ベンチャー技術動向に興味がある方】

世界の培養肉・植物性タンパク質ベンチャーの技術動向、網羅的なロングリスト作成、大学も含めた先端技術調査に興味がある方はこちらも参考。

参考:グローバル受託技術リサーチはこちら