スマートARグラスの開発で注目されいていたWaveOptics

WaveOptics社は、2014年に英国オックスフォードで設立されたスマートARグラスを開発するベンチャー企業である。同社は一般消費者マスマーケット向けのARスマートグラスを開発していた。

ガラスのレンズ表面に、光を効率的に集め、通る道とする精密ナノ構造の導波路を形成する技術を持つ。この技術を使うことで、より広角の視野と輝度の高いARディスプレイが実現できる。同社はこの技術を2次元瞳孔拡張と呼ばれる概念と説明している。

光学技術の有名なカンファレンスのプリズムアワードも受賞しており、同分野で非常に有望視されていたベンチャー企業の1社だった。

参考:ARスマートグラスのWaveOpticsが2020年プリズムアワードを受賞

同業のSnapに買収される

WaveOpticsは5月に、同じく拡張現実ARスマートグラスを開発しているSnap Incに買収されることを発表。

なお、WaveOpticsにこれまで1,600万ポンド(約25億円)出資をしていたVCのOctopus Titan VCT PLCによると、Snapは、WaveOpticsの現在の保有価値と実質的に変わらない価値で買収する条件に合意したとのことである。

スマートグラスは市場予測では大きく拡大が予測されるも・・・

富士キメラ総研の市場規模予測によると、AR・MRスマートグラスの世界市場は2020年に441億円と見込まれるのに対し、2030年には13兆9,500億円へと大きく成長することが見込まれている。

将来的にはBtoCのゲーム用途やBtoBtoCのアミューズメント用途等も含めて爆発的に成長することが予想されている一方で、直近は必ずしも市場は大きくない。市場の対象はBtoBが中心となるが、台数としてはまだ小さいのが現状であり、市場が大きくなるとしてもハードだけでなくソフトやアプリケーション面でも成熟が必要であり、時間がかかる。

資金調達フェーズでシリーズCまで進んでいるWaveOpticsが買収されたというのは、自社単独での成長を諦めたということであり、市場開拓に時間がかかると見たことも背景にある可能性がある。

 

今回参考のプレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
Googleもスマートグラスを一般消費者向けに一度テストローンチしたが、商用化はせず、今はBtoB向けのエンタープライズ版を展開していると言われています。BtoC向けでは、もっとハードウェア・ソフトウェア面の使い勝手、そしてアプリケーションのエコシステムができないと、あまりユーザーにとって魅力的なものにはならないのでしょう。そのため実用性を重視してBtoBでまずは小さく事業化してみるフェーズにあると言えます。スマートグラスを開発していたNorthもGoogleに買収されており、今後もプレーヤーの統廃合は起こってもおかしくなさそうです。

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