ブラジルのグローバル大手航空機メーカーであるエンブラエルが支援するベンチャーであるEve Urban Air Mobility Solutions, Inc. (Eve)が、200機のeVTOLを民間ヘリコプター旅行会社のHalo Aviationから受注したことが明らかになった。

新規領域の事業開発を進めるEmbraerX

エンブラエルは、航空機メーカーのグローバル大手だ。これまで製造された航空機は8,000機を超え、従業員18,000人を抱える。航空機メーカーでは世界シェアNo.1, 2のボーイング社とエアバス社もともにUAM(アーバンエアモビリティ)の領域に参入しているが、エンブラエルも同様だ。

(補足)なお、ボーイング社はKitty Hawkと一緒に合弁会社Wiskを設立して、現在機体の開発を進めている。エアバスはCityAirbusというマルチローターの4人乗り遠隔操縦機体の開発を進めている。

エンブラエルはEmbraerXという、破壊的イノベーションとなるような新規領域での事業開発や技術開発を目的に設立されたアクセラレーション部隊だ。外部の技術パートナーと協力して、短期的にはeVTOLや航空機のメンテナンスプラットフォーム、アーバンエアトラフィック管理システムの開発などに取り組んでおり、中長期的には宇宙ビジネスの商業化などに取り組んでいる。

eVTOLを開発するEVE

今回、eVTOLを開発しているEVEは、このEmbraerXで4年間開発された技術を元にできたスピンオフベンチャーだ。現在開発している機体はすでに第五世代の機体となっている。

同社公開の動画への直リンク

スペックの詳細は明らかにされていないが、コンセプトデザインを見ると、4人乗り(+パイロット1名)の機体で、2つの推進用プロペラ、両翼にそれぞれ小型ローターが4つずつ付いている。

今回、都市部でのヘリコプター運用サービスを手掛けているHalo Aviationに、EVEは100機のeVTOLを2026年に納入するという。

Haloは米国ニューヨークと、英国ロンドンに拠点を持ち、米国内にも複数施設を保有している。ヘリコプターのチャーター・メンテナンスサービスを提供している。現在はヘリコプターでエアモビリティサービスを行っているが、将来はeVTOLの運用とサービス提供を行う。

さらに、Haloは2021年5月にOneSky Flight社から買収されており、同年2月にもエグゼクティブヘリコプターサービスのオペレーターであるAssociated Aircraft Group (AAG) を買収し、HaloとAAGはHaloブランドの元に統合されることになっている。

 

今回参考のプレスリリースはこちら


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ー 技術アナリストの目 -
JobyやLilium、Volocopterなどの先行するeVTOLメーカーはおおよそ2024年あたりで市場に機体を供給し始めるため、EmbraerX(EVE)はやや機体開発が遅れています。それでも2026年という長い時間軸での機体納入の受注をするあたり、やはり世界的な航空機メーカーのネットワークやブランド力は非常に高いのだと感じます。また、今回のリリースではもう1つ興味深い点があり、Haloのような既存のエアモビリティサービスを手掛けている企業が、アーバンエアモビリティ市場の形成とともに統廃合されていく動きがある点です。今後徐々にローカルにネットワークを持った企業との提携や統廃合も増えてくるでしょう。

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