スウェーデンの電池メガベンチャーであるNorthvoltが、6月9日、セル生産とR&D強化への投資のために、27.5億ドル(約3,000億円)の私募を発表した。

この私募はAPファンド1-4号、4to1インベストメント、カナダ最大規模の確定給付年金制度OMERS、そして既存投資家のゴールドマンサックスアセットマネジメントとフォルクスワーゲングループによる共同主導で行われている。

2030年までに欧州での電池生産能力を150GWhへ

Northvoltは現在、自動車分野ではBMWとフォルクスワーゲン、大型トラックのスカニア、グリッドストレージのFluenceなどの主要顧客から270億ドル(約2.9兆円)相当の契約を締結している。なお、中でもフォルクスワーゲンとは関係が深く、2021年3月に140億ドル(約1.5兆円)相当の受注について発表していた。

同社は2030年までに欧州での電池生産能力を150GWhへ引きあげるロードマップを明らかにしており、これまでも私募を含めて65億ドル(約7,120億円)以上の株式と負債を調達しているという。

2つのギガファクトリーを建設する予定

同社は、2030年150GWhの生産能力の目標を達成するため、今後10年間で少なくとも 2 つのギガファクトリーをヨーロッパに建設する予定だ。現在はドイツで次のギガファクトリーを建設する機会を積極的に模索していることを明らかにした。

また、スウェーデンですでに建設しているギガファクトリーのNorthvolt Ettは、年産能力を当初計画の40GWhから60GWhへと拡大し、今年後半に生産を開始する。

R&D面ではリチウム金属電池にも投資

同社は、今年3月にスタンフォード大学発のリチウム金属電池ベンチャーCubergを買収している。

リチウム金属電池は、負極を従来のグラファイトからリチウム金属に代えることで大幅な電気容量の増加が期待されており、複数のベンチャー企業や大手企業が研究開発に取り組んでいる。一方で、デンドライト形成の問題があり、昔から長く大学等でも研究されているが、現在まで実用化はできていない。

Cubergは負極にリチウム金属単体ではなく、リチウム-マグネシウム合金とすること、そして不燃性の電解液を使うこと等で課題を解決しようとしている。

参考:Northvoltがスタンフォード大学発のリチウム金属電池ベンチャーCubergを買収

 

今回参考のニュースリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
規定路線ではありますが、3,000億円という巨額の資金調達による電池セル生産能力の整備の動きです。スウェーデンのギガファクトリーの年産規模を40GWh→60GWhへと引き上げるということで、足元の欧州EV市場での旺盛な需要が伺えます。

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