GPUの世界大手であるNVIDIAが、6月10日、自動運転用の3D高精細マップを開発しているベンチャー企業であるDeepMapを買収することを発表した。買収金額については明らかにされていない。

買収プロセスは規制当局の承認と完了条件に従って、2021年の第3四半期に完了する予定である。 

DeepMapは有望視されいてたシリコンバレーベンチャー

DeepMapは2016年にシリコンバレーで設立されたベンチャー企業である。自動運転においてHDマップは非常に大事なコンポーネントであり、DeepMapは独自の3D HDマップを製作していた。

点群データをLiDARを使い収集し、カメラのデータと合わせてデータのセグメンテーションを行い、交差点、道路標識、交通規制、車線など、車両の環境に関する多数の情報をリアルタイムで提供する。マップの精度はcmオーダーだという。

詳細はこちら:自動運転向け高精細3Dマップを開発するベンチャーのDeepmap

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内製・買収・提携など様々な動きがあるHDマップ

ジオメトリ―方式の自動運転には必須のコンポーネントであり、HDマップを内製化するかどうかは各社によって判断が分かれる。内製・買収・提携など様々な動きがあるのがこのHDマップ領域だ。

早くは、BMW、Audi、Daimlerが2015年に企業連合でHEREをNokiaから買収している。これらの企業は買収により内部にマップ機能を取り込むことを選択している(ただし買収自体がHDマップを目的としたものかどうかは不明)。

トヨタはTRI-ADを通してTomTomやHERE、NTTデータなど様々な企業とHDマップ生成の実証実験を積極的に行っており、度々これまでもHDマップについて発表を行ってきた。さらに中国の自動運転ベンチャーMomentaと提携し、MomentaのカメラベースのHDマッピング技術とトヨタのHDマップ生成基盤技術を合わせて、自動マッピングプラットフォームを商業化する意図がある。

一方で、自動運転ベンチャーであるCruiseやWaymoは完全独自路線で内製化している。HDマップが自動運転の制御アルゴリズムに大きく影響することから、自社システムに合うようにカスタマイズし、独自にデータ収集・マップ生成を続けていると見られる。

マップメーカー同士の合従連衡もある。国内自動車メーカーと産業革新機構(INCJ)による出資を受けて設立されたダイナミックマップ基盤株式会社は、米国でHDマップを開発しているUshrを2019年に買収している。日本と米国にそのカバレッジを拡げることが狙いだ。

今回のNVIDIAによるDeepMapの買収は新しいパターンであり、自動運転のコアコンポーネントであるGPUが、高速処理と最小限のデータストレージで、AVフリート全体で効率的にHDマップの処理を行う必要があることから、HDマップ機能を取り込むこととなった。

 

NVIDIAのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
GPUメーカーが周辺領域であるHDマップを内部に取り込むという新しい動きとなりました。HDマップにおいてはカメラやLiDARで取得した大量のデータを、リアルタイムで、効率的に処理していくことが必要であり、GPU側と一体となることで高効率処理をスケーラブルな形で構築できることで付加価値を高めることができる、という意図がNVIDIA側にあったことが発表から伺えます。またHDマップメーカーにとっては、HDマップの作成には測量車両を道路を走らせてデータ収集・更新する必要があり、エリアカバレッジを拡げるには資金体力が必要になります。そのため、NVIDIAのような資金力のある企業か、またはOEMなどの車両を持っている企業と組むことに意義があるため、今回の判断に至ったと考えられます。