シンガポールのベンチャー企業であるAevice Healthはリモート呼吸モニタリングのためのウェアラブルデバイスとアプリを開発している。

同社は6月15日、日本企業の東邦ホールディングスから280万シンガポールドル(約2.3億円)のプレシリーズA資金を調達し、戦略提携を行うことを発表した。

慢性呼吸器疾患のモニタリング

慢性呼吸器疾患の患者は非常に多い。例えば、慢性呼吸器疾患の1つである、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者数は、世界で2億1,000万人と推計されている1)。日本においてもCOPDの患者数は500万人以上いると推定されているが、実際にCOPDであると診断された人は22万人となっており、COPDであると気づいていない、または正しく診断されていない可能性が指摘されている2)

そうした背景から、様々な企業が呼吸モニタリングのデバイスやシステムの開発に取り組んでいる。Aevice Healthはその1社だ。2016年にシンガポールで設立された同社は、南洋理工大学からのスピンオフベンチャーであり、胸に取り付けるタイプの小型のウェアラブルデバイスとアプリを開発している。

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このデバイスは呼吸数と心拍数、そして喘鳴(ぜーぜー、ひゅーひゅーする音)、咳の有無を検出することができる。専用のアプリは、呼吸器疾患の悪化の初期兆候を検出すると、タイムリーな介入を促すため、ユーザーへと警告する。

また、このアプリは遠隔医療相談ができるように、プラットフォームを介して収集した履歴データを医師と簡単に共有し、電話で相談も行うことができる。

日本市場への参入を狙う

今回、Aevice Healthへ出資を行った東邦ホールディングスは、医薬流通の大手企業だ。医薬品卸売だけでなく、自社で調剤薬局事業も行っており、全国に700以上の薬局を持つ。今回の提携により、Aevice Healthが開発するAeviceMDデバイスの日本での商品化を行う。

Aevice HalthのCEOであるAdrian Ang氏はこう述べている。
「パンデミックは遠隔医療の成長と採用を加速させ、患者が医療提供者と対話する方法を変革しました。AeviceMDは、患者に一連の包括的で個別化されたケアをリモートで提供する最先端のソリューションです。東邦ホールディングスと提携し、投資家の支援を得て、Aevice Healthを日本の遠隔医療業界の最前線に位置づけることに興奮しています。」

 

今回参考のプレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
COPDや喘息を対象としたモニタリングデバイスを開発するベンチャー企業は複数存在しており、開発が進められています。ただし、まだ本格的に普及しているデバイスは無いという認識で、例えばFDAから医療機器認定を受けて有望視されていたウェアラブルベンチャーのSpry Healthはイスラエル企業のItamarに買収され、COPDから睡眠時無呼吸症候群へとモニタリング対象をピボットしています。ベンチャー単独では商業化に苦戦しており、東邦ホールディングスのような大手企業が参入することで、市場が開拓されることを期待したいところです。

参考文献:

1) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の現状について, 厚生労働省健康局生活習慣病対策室

2) COPDに関する統計資料, 一般社団法人 GOLD日本委員会 COPD情報サイト