NEO Battery Materials Ltdは、リチウムイオン電池の負極向けシリコンナノコーティング技術を開発しているベンチャー企業だ。同社は6月、従来負極で使われるグラファイトにシリコン粒子を混合した負極材の材料評価で良好な結果が出たこと、それを受けてパイロット生産プラントの設計に着手したことを発表した。

負極向けシリコンナノコーティング

NEOはカナダのバンクーバに拠点を持つ、電池材料と金属に焦点を当てた資源会社だ。

同社はアノードに使うシリコンナノコーティング技術の開発と、シリカ原料の採掘を行おうとしている(2021年2月にカナダのブリティッシュコロンビア州で採掘権を主張しており、順調に行けば年内に採掘が開始)。

同社のCOOは元Samsung SDIの調達責任者、チーフ科学アドバイザーにはLG化学のシニアリサーチャーや、McGill Universityの材料エンジニアリングの教授が名を連ねている。カナダ企業ではあるが、韓国人によって経営層が構成されている。

実験で良好な結果が出たことが発表

なお、実験は以下の条件で行われている。同社のシリコンブレンドは、黒鉛に対して9:1の比率で行われているようだ。

  1. 積載質量:6.5mg / cm 2
  2. 電極密度:1.1g / cm 3
  3. 天然黒鉛/ Si比:9:1
  4. 充電条件:CC / CVモードで0.5C(CCモードではない)
  5. 電圧:0.01V〜1.5V

同社の主張によると、天然黒鉛アノードにNEOのナノコーティングされたシリコンを10%混合すると、充放電サイクリング中のシリコンの体積膨張を最小限に抑えて、より均一な固体電解質界面(SEI)層の形成が可能になり、2倍以上の容量保持が得られるという。

(補足)ただし、このシリコン10%ブレンドで2倍以上の容量保持が得られるというのはかなり大きな数値となっており、この数値をそのまま捉えるのは難しい。実際にどこまでの容量向上が期待できるのか、現時点では詳細なスペックは明らかにされていない。

なお、別のリリースでは半電池コインセルでの実験で、12Cレートでのパフォーマンステストでは、大きな容量損失や安全性の懸念なしに、5分間レベルの超高速充電/放電を実現したという。さらに今後、フルセルでのプロトタイプの開発を行っていく。

シリコンアノード材料のパイロットプラントの設計に着手

同社は6月、こうした良好なテスト結果を受けて、アノード向けのシリコン材料生産のためのパイロットプラントの設計に着手したことを発表。

このパイロットプラントプロジェクトは、従来の液体ベースのリチウムイオン電池、及び次世代の固体電池にとって戦略的に重要な、約50nmから数μmのさまざまな粒子サイズのSi材料を生産することを目的としている。

同社のアノード向けシリコン材料生産は、高温・高圧・真空などの複雑な工程が不要であり、大幅なコスト削減を実現できる効率的なシングルステップでの生産を実現することができると主張している。

 

今回参考のリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
すでにLIB負極向けアノード材料では、Group14が商業規模の生産プラントを立ち上げるなど、一部企業で徐々に生産量が増加しています。負極へのシリコンブレンドはこの数年、様々な電池メーカーが採用することが予想され、需要拡大をチャンスととらえて、数十社の企業がアノード材料に参入もしています。NEO社もフルセルでの評価を今後行っていくとしていますが、電池セルの知見が深い企業でないと、中々生き残ることが難しそうな市場になりそうです(なお、NEO社の実力は現時点ではまだ未知数)。

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