イスラエルの培養肉生産技術を開発するベンチャー企業であるFuture Meat Technologiesが、1日5,000個相当の培養肉を生産することができる生産施設を立ち上げたと発表した。

拡大する代替肉市場

世界の代替肉市場は拡大している。

矢野経済研究所の推計によると、2020年における代替肉の世界市場規模(植物由来肉・培養肉計)はメーカー出荷金額ベースで、2,572億円となっており、2025年には6,732億円に拡大すると推計されている1)

この代替肉市場は、大きく3種類に分けることができる。大豆や小麦から抽出したたんぱく質から作る植物性代替肉。そして、牛や豚、中には普段食べないような珍しい動物の細胞をラボで培養して製作する培養肉。最後に昆虫などを対象としてタンパク質を抽出して加工したものだ。

多くは植物性代替肉か、培養肉の技術を開発しているベンチャー企業に振り分けることができ、Future Meatは培養肉の技術を開発している。

創業から3年で40m$もの資金を集める

Future Meatは2018年にイスラエルで創業したベンチャー企業だ。その技術の出自はイスラエルの有名大学であるヘブライ大学だ。なお、ヘブライ大学は創設者の1人があのアインシュタインである総合系大学だ。(詳細は以下参照)

参考:世界の大学におけるベンチャー排出ランキング~イスラエルのトップ4大学を紹介~

CEOのRom Kshuk氏は、ヘブライ大学で研究された技術を企業へ移転するYissumという組織で事業開発に従事していた者で、CSOのYaakov Nahmias氏はヘブライ大学の研究機関のディレクターを務める。

Crunchbaseによると、同社はすでに40.8m$もの資金を調達しており、2021年2月に実施されたConvertible Note(※1)では26.8m$の資金を集めている。

※1 Convertible Noteとは、将来の資金調達時に貸付金を株式へ転換する転換社債の一種。よくシード期で実施される形態となる。

培養肉の高速生産を可能に

同社は、動物細胞から直接生産された費用対効果の高い非遺伝子組み換え肉の開発に取り組んでいる。

同社が2021年2月に発表した技術開発の進捗によると、培養鶏胸肉の生産コストを$7.50(原単位不明)に削減することに成功したことを発表している。従来の市場の期待より高効率に培養肉を生産できる技術にめどがついたことで、パイロット生産プラントに着手するとしていた。

今回、その進捗として5,000ハンバーガーに相当する1日500キログラムの培養製品を生産する能力を備えたパイロット生産施設を建設。従来の畜産の約20倍の高速生産サイクルが可能になるという。この施設では、鶏肉、豚肉、子羊の培養物を生産でき、牛肉の生産も間もなく開始される見込みだ。

同社CSOのYaakov Nahmias教授はこう述べている。「培養肉が市場の予想よりも早くコスト目標に達することができることを実証した後、この生産施設は真のゲームチェンジャーとなります。」

同社は現在、2022年内に米国で代替肉の製品が展開されることを計画しており、米国内のいくつかの場所での生産を検討しているという。

 

同社のHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
代替肉生産の話題も増えてきました。同社のビジネスモデルは直接的な代替肉生産自体はやらないものと思っていましたが、今回の発表からすると、自社で代替肉を生産して提供していくようです。創業からわずか3年でパイロット生産プラントの稼働までこぎつけており、その事業展開スピードは非常に早いものとなります。

【世界の培養肉ベンチャー技術動向に興味がある方】

世界の培養肉・植物性タンパク質ベンチャーの技術動向、網羅的なロングリスト作成、大学も含めた先端技術調査に興味がある方はこちらも参考。

参考:グローバル受託技術リサーチはこちら


参考文献:

1) 代替肉(植物由来肉・培養肉)世界市場に関する調査を実施(2020年), 矢野経済研究所