レーダーセンサーは自動運転を代表するセンサーの1つであり、LiDAR、カメラと並ぶ重要なコンポーネントだ。レーダーセンサーの開発を行うベンチャー企業の数は、LiDARに比べると少ないものの、近年、大型の資金調達が相次いでいる。

参考:高精細4DレーダーのArbeがSPACで上場し、最大192億円の資金を調達

現在市場で使われているミリ波レーダーは、波長1~10mm、周波数30G~300GHzの電磁波を用いたレーダーだ。特に近年は周波数帯の比較的高い77GHzや79GHzの波長を用いた、高精細レーダーを開発する企業が増えている。Oculiiも77GHzを使ったレーダーを開発する1社だ。

シリーズBで80億円超を調達

高解像度レーダーセンサーとAIソフトウェアを開発するベンチャー企業のOculiiは、2015年に設立されたベンチャー企業だ。米国オハイオ州に本社を構え、シリコンバレーと北京にもオフィスを持つ。同社は2021年5月にシリーズBで55m$(約60億円)を調達しており、これまでの累積資金調達額は76m$(約84億円)にも上る1)

同社にはパナソニックが組成するファンドのConductive Venturesや、グローバルの自動車Tier1のHELLAのCVCも出資を行っている。

直近にADAS・自動運転向け製品をローンチ

同社は最近、EAGLEとFALCONという2つのレーダー製品をローンチしている。

FALCONはADASやロボット知覚向けに使うことを想定しており、200m範囲の物体検知が可能で、角度分解能は方位角2.0°×仰角5.0°、FOVは120°×30°となっている。

そしてEAGLEは、ADAS・自動運転向けのレーダーセンサーで、350m以上の距離での物体検知を可能にし、角度分解能は方位角0.5°×仰角1.0°、FOVは120°×30°となっており、FALCONより角度分解能が高く長距離検出性能を持つ。

なお、この角度分解能が1°未満のものというのは、かなり高精細のスペックであり、例えばSPAC上場を行う4DレーダーのArbeの角度分解能は方位角1°×仰角2°となっており、Oculiiの分解能の高さが伺える。

強みは高解像度を実現するAIソフトウェア

Oculiiの強みは、ハードウェアというよりもAIソフトウェアにある。従来のレーダーでは解像度はアンテナの数に依存してしまい、解像度を上げようとするとコスト、サイズ、消費電力が増加する。

同社が開発したVirtual Aperture Imaging(仮想アパーチャーイメージング)テクノロジーは、環境に応じてリアルタイムで変化する適応位相変調波形を動的に送信し、時間の経過とともにデータをエンコードする。これにより、同社の主張によるとレーダーハードウェアの解像度を最大100倍に高めることができる。

ハードウェア依存ではないことから、スケーラブルであり、コストを抑えながら解像度を上げることができる。

自動車OEM・Tier1・Tier2と開発提携

今回発表されたところによると、同社はグローバルのTier1・Tier2上位20社のうち14社と提携しており、北米・ヨーロッパ・アジアの大手自動車OEMや自動運転企業と商業開発契約を結んでいるという。

シリーズBで出資を行ったConductive VenturesのマネージングダイレクターであるPaul Yeh氏はこう述べている。「Lang Hong博士と彼のワールドクラスのチームは、LiDARの解像度をレーダーセンサーにもたらす手頃なソフトウェアソリューションを開発しました」。

 

同社HPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
LiDARに比べるとベンチャー企業に流入している資金は桁が小さいですが、これでレーダー競合のArbe、Uhnderに続いて比較的大きな規模の資金調達を実施することになりました。直近ではテスラがオートパイロット機能において、レーダーセンサーを削除して、8つのカメラのみで構成する方針を示しています。LiDARも将来的に、長距離性能や対外部環境へのロバスト性能を向上させていく方向であり、中期的にはレーダーセンサーの存在意義が問われそうです。

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参考文献:

1) Crunchbaseより