FREYRは次世代リチウムイオン電池のギガファクトリー生産を目指す、ノルウェーのベンチャー企業だ。同社は2025年までに最大43GWhのバッテリーセル生産能力を確保し、ヨーロッパ最大のバッテリーセルサプライヤーの1つになることを狙っている。

FREYRは以前よりアナウンスしていたAlussa Energy Acquisition Corpとの企業合併が2021年7月9日に完了する予定であることを発表した。SPACによりニューヨーク証券取引所に上場することになる。

2025年までに40GWh超の工場を建設

FREYRは2018年に設立されたばかりのリチウムイオン電池ベンチャーだ。同社はマイルストンとして、2025年までに最大43GWhの次世代電池のセル生産工場を立ち上げることを明言している。

FREYRは、一連の企業統合の一環として約8億5,000万ドルの株式収入を受け取ると見込まれており、資金はセル開発と生産工場立ち上げに使われる見込みだ。なお、合併後の会社の見積株式価値は約14億ドルになるという。

同社のポジショニングはやや変わっている。自社単独でセル技術や製造技術の開発を行うわけではなく、基本的には全てパートナーシップベースで、他社と共同で技術を揃える。原則、商用化可能な技術(または商用化間近の技術)を対象として、協業を行う。

バリューチェーン上のパートナー群

同社公開情報より当社作成
(MOUを締結したのみで正式に提携していない企業・団体も含む)

半固体電池の24M Technologiesからもライセンス供与を受ける

FREYRは、半固体電池を開発している24M Technologies社からも技術ライセンス供与を受ける提携を行っている。24M Technologiesは日本の京セラも共同開発を行っており、今年5月に実施されたシリーズEラウンドでは、伊藤忠商事がリードインベスターとして参画。56.8m$(約63億円)もの資金を調達している。

24M Technologiesの電極はバインダーフリーで、電解質と活物質を混合し、粘土(クレイ状)のようなスラリーを形成する独特な技術を開発している。正極にはMNC系、負極にはシリコン材料を使っており、正極にLFPを使ったものは京セラが量産化に向けて開発を続けているようだ1)

(補足)なお、FREYRが生産を計画している40GWh超の電池が、全てこの24M Technologies社由来の半固体電池かどうかは不明。

 

今回参考のプレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
上手く立ち上がれば半固体電池の量産は2024~2025年であるようです。2023-24年をターゲットに開発するEV向け電池ではエネルギー密度が319Wh/kg、充電時間は15~25分と高スペックの電池となっています。ただし、その頃にはシリコンアノードのリチウムイオン電池で300Wh/kgを超えるスペックのものや、超高速充電の電池など色々と出てくると思いますので、コスト面での優位性や、半固体電池にすることによる安全性への対応次第で採用されるかどうか変わってきそうです。

参考文献:

1) 厚塗りの半固体電池をさらに高性能に、デュアル電極で容量維持率が大幅アップ, 日経クロステック(リンクはこちら

2) ノルウェーのスタートアップ電池企業フレイル(FREYR)CTO、川口氏に聞く, MIRU (Metal Information Resources Universe)(リンクはこちら