リアルタイムのコンピューター生成ホログラフィーによる、新しいホログラフィックディスプレイを開発するVividQが1,100万ポンド(約17億円)の資金調達を実施したことを発表した。

このラウンドは東京大学のInnovation Platform(IPC)が主導し、Foresight Williams Technology、や日本のみやこキャピタル、オーストリアのAPEX Ventures、シリコンバレーのR42 Groupが出資者として参加している。

コンピューター生成ホログラフィー

VividQは2017年にケンブリッジ大学からのスピンオフベンチャーとして設立された。

下記の記事でも触れているが、いわゆる3Dホログラムというものは「光の振幅」「光の波長」「光の位相」の3つを記録し、そしてその情報を完全に近い形で立体映像として再現する技術のことを指す。

参考:未来のインターフェース「3Dホログラム」技術の紹介

一方で、上記の3Dホログラムを使ったディプレイ技術というのは非常に複雑である。何らかの方法で3D物体の情報を媒体に記録しておき、光の干渉によって再現する必要がある。

一方で、現在各ベンチャー企業で技術開発されているのはホログラムライクな技術ということで、疑似ホログラムという表現をされることもある。

VividQが開発している技術は、コンピューターによるリアルタイムでのホログラフィー生成技術であり、ゲームエンジン、CAD、深度検知カメラなどのさまざまな3Dデータソースから3次元投影を作成する。

WebSummit2019のVividQの講演の様子

VividQの技術は、アルゴリズムによって自然な被写界深度を持つ3次元の仮想シーンを生成する。そして、空間光変調器(SLM)と呼ばれるデジタル光デバイスを使用し、光のパターンを作成する。表示するオブジェクトごとに、SLM内の各ピクセルの値のセットを見つけ、ピクセルから反射された光が適切な方法で干渉して、目的のホログラフィックイメージを形成するようにすることができる。

現在、実用化されているARホログラフィーは特に深度の再現性が欠けており、現実世界にあるものとは異なるように見えてしまう。結果として、目の疲れや酔いを引き起きしてしまう。同社の技術により高精度な3次元ホログラフィーを生成することで、こうした課題を解決できるとしている。

2022年までに製品をローンチ

VividQは今回得られた資金を活用して、米国とAPAC市場で事業を拡大し、新しい顧客へアクセスしていくという。

2021年の終わりに向けて、VividQを搭載したホログラフィックHUDデモを自動車OEMに対して紹介し、画質とユーザーエクスペリエンスを大幅に改善した最新世代のARヘッドセットコンセプトを紹介する。

そして2022年までに同社の製品「HoloLCD」を発表する。これは、標準のLCDパネルに同社のホログラフィック技術を搭載した、ラップトップスケールのホログラフィックディスプレイで、メガネを必要とせずに完全な3次元体験を提供することができる。

 

今回参考のプレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
拡張スマートグラスのWaveOpticsがSnapに買収されるなど、決して簡単ではないこのホログラフィックディスプレイの開発ですが、今回1,100万ポンドの資金調達ということで、同社としてはシリーズAに該当するでしょうか。技術的にはホログラフィを生成するアルゴリズムがベースにあることから、様々な用途への拡がりが期待されますが、最初のキラーアプリケーションを見つけられるかどうかがカギになりそうです。

【世界のホログラフィックディスプレイ技術を調査したい方】

世界の3Dホログラム技術やホログラフィックディスプレイを開発するベンチャー企業や大学研究機関の技術動向を調査したい方はこちらも参考。

参考:グローバル先端技術リサーチはこちら