空飛ぶ車・eVTOLを開発するドイツのベンチャー企業であるVolocopterは、生産体制の確保に向けて、DG Flugzeugbau社を買収し、欧州連合航空安全機関(EASA Part 21G)に準拠した生産組織承認(POA)を確保したと発表した。

商業化に向けて生産体制を確保

Volocopterは2023年のエアタクシーサービス開始のコミットメントを発表している。

参考:Volocopterがエアタクシーサービスを2023年に開始するとコミットメントを発表

JobyやLiliumなど、他の多くのeVTOLを開発するベンチャーがおおよそ2024年前後での量産開始を計画して、機体の承認作業や生産体制の確保に向けた準備を行っている。

今回、Volocopterは長年パートナーシップの関係にあったDG Flugzeugbau社を買収し、生産体制を一気に確保することになった。DG Flugzeugbau社は、ドイツの企業であり、2シーターの固定翼小型飛行機を生産している。また、同社は機体のメンテナンス部門も保有しており、自社開発の機体だけでなく、他社の機体のメンテナンスも行っている。

Volocopterは今回の買収にあたって以下の様にコメントをしている。

「DG Flugzeugbauとの10年間のパートナーシップは、並外れた学習経験でした。この伝説的な業界リーダーが私たちの側にいて、人と貨物のためのスケーラブルで手頃なUAMを開始することは、ゲームチェンジャーです。今回の合意は、航空生産におけるDG Flugzeugbauのリーダーシップを、ボロコプターの先駆的なUAM目標と統合し、私たちの集合的なグローバルな取り組みのための重要な足がかりを確立するという、エキサイティングなマイルストーンを示しています。」

今回の買収を通して、VolocopterはDG Flugzeugbau社の航空機生産部門を内部に取り込むことになる。DG Flugzeugbau社はすでに40年間もの間、航空機の生産を行っており、EASAの製造組織承認(POA)を得ている。なお、DG Flugzeugbau社の航空機設計・メンテナンス部門はVolocopterの傘下には入らず、新しく設立された企業であるDG Aviation社に統合される。

Volocopterは2019年にEASAから設計組織承認(DOA)を取得しており、型式証明を完了し、EASAに準拠した生産組織承認を取得することで、最初の商用航空機を市場に投入する準備が整うことになる。

Volocopterは5月に中距離輸送セグメントでの機体VoloConnectも発表している。

参考:Volocopterが郊外-都市を結ぶ中距離輸送用の新しい機体を発表

2023年のサービス開始に向けて事業開発や生産体制の整備に向けた動きが加速している。

 

同社HPはこちら


Joby Aviation、EHang、Volocopter、Liliumなど空飛ぶ車の主要ベンチャー企業の全体像について知りたい方は、こちらで特集記事を作成しているのでご参考。

参考記事:(特集) 空飛ぶ車・エアモビリティの世界ベンチャー企業動向


ー 技術アナリストの目 -
まさに垂直立ち上げ、といった様相で、買収によって生産体制を一気に整えるという動きになります。2023年にエアタクシーサービスの開始をコミットメントとして発表している同社としては、恐らく量産も2023年に開始するものと思いますが、他社は2024年から量産開始としているベンチャーも多く、やや時間軸としては展開が早いため、買収によって一気に体制を確保する(認証プロセスも省く)ということになったのだと思います。

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