カナダのベンチャー企業であるSvante IncがCO2回収の実証プロジェクトで、カナダ政府から2,500万カナダドル(約21.8億円)の資金提供を受けることを発表した。

今回の資金供与は、Strategic Innovation FundのNet Zero Acceleratorイニシアチブからのものであり、カナダ政府の強化気候プランに沿ったもの。カナダ政府からすると、カナダの経済および環境目標の達成に役立てるという目的がある。

化学吸着法によるCO2分離技術を開発

カナダのSvanteは化学吸着法(固体吸着剤技術)によるCO2分離技術を開発している。この方法は、多孔質担体にアミンを含侵またはアルカリ金属を担持させることで、再生エネルギーを低減させる1)。同社はCO2の貯蔵容量が非常に大きいオーダーメイドのナノ材料(固体吸着剤)を使用しており、他の材料では数時間かかるCO2の吸着時間が、同材料を使うことで60秒未満でCO2を捕獲することができる。

同社によると、この技術は従来のエンジニアリングソリューションの半分の資本コストでCO2を回収可能な画期的な技術であるという。CO2の回収率は最大95%であり、CO2を多く排出する工業プラントや発電所などで使うことで、二酸化炭素が大気中に放出されるのを防ぐことができる。

Svanteは2007年に設立されて以来、累積の資金調達額は1億9,500万米ドル以上にも上り、その技術は現在、エネルギーやセメント製造の業界リーダーによってパイロットプラント規模で現場に導入されている。

今回のカナダ政府からの投資により、Svanteはカナダのバンクーバーに新しい炭素回収・貯留センター(CCUS)を設立し、商業規模のCO2吸収フィルターを製造し、独自のテストを行うことができるようになる。このCO2吸収フィルター製造プラントの製造能力は、CO2を年間3百万トンを除去することに相当するという。

 

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ー 技術アナリストの目 -
近年、欧米を中心として再度「サステナビリティ」が脚光を浴びており、こうした環境技術への投資が盛んになってきています。SvanteはCO2回収技術の代表的なベンチャー企業であり、カナダ政府も実用化に向けた育成には非常に積極的であることが伺えます。

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参考文献:

1) 二酸化炭素固体吸収材の実用化に向けた研究開発の進展, 地球環境産業技術研究機構(RITE)化学研究グループ, 余語 克則氏, 革新的CO2分離回収技術シンポジウム(2021年2月)