自動運転レベル4のシステムを開発する中国のWeRideが、同じく中国の自動運転スタートアップMoonX.AIを買収したことを発表した。

ロジスティクス分野の無人自動運転技術を開発していたMoonX.AI

MoonX.AIは2018年に深圳に設立されたベンチャー企業で、ロジスティクス業界を対象とした無人運転ソリューションを開発していた。同社のCEOであるQingxiong Yang氏は香港城市大学の助教授を務め、DiDi Chuxingで自動運転のシニアディレクターとして活動し、コンピュータービジョンの専門家として、70以上もの国際論文を発表している人物だ。

MoonX.AIは、高精度のHDマップを備えた自動運転システムをトラックに搭載。中国で初めて1.5 kmの長さのトンネルを無人で運転し、GPS信号のない遠距離環境での高精度の地図作成と車両測位の問題を解決する技術を開発したという。

MoonX.AIは現在20台以上の自動運転乗用車とトラックを運用しており、深セン、厦門、泉州での公道試験と試験運用を完了し、30万kmを超える自律走行試験を実施している。また、大手物流会社、厦門公共交通機関グループ、中国の果物チェーン店Pagadaなど、業界の大手企業と戦略的パートナーシップも進んでいた。

WeRideがMoonX.AIの人員を内部に取り込む

今回の買収により、MoonX.AIの創設者兼CEOであるQingxiong Yang博士は、WeRideの副社長およびWeRide Research Instituteのトップになり、MoonX.AIからは50人を超える経験豊富なエンジニアがWeRideに参加することになる。

また、Yang博士のリーダーシップの下で運営される、WeRideの深セン拠点の開設も発表された。

短期的なマネタイズが期待されるロジスティクス×自動運転

ここ最近、ロジスティクス分野には多くの自動運転企業が注力する動きが見られている。

WeRideは元々ロボタクシー(またはシャトル)による都市内移動のサービス化に焦点をあてていたが、今回の買収によりロジスティクスでの無人自動運転のノウハウを手に入れることになる。

また、先日SPACで上場することを表明したAurora Innovationは、同社の自動運転システムを搭載したトラックを2023年末に商業化する予定であることを明らかにしている。

参考:自動運転AuroraがSPACで上場、2023年後半にトラックで商業化

Waymoもロボタクシーとトラックの2大分野で事業化を進めており、同社の配送ビジネスユニットであるWaymo Viaを通して、北米におけるトラックによる輸送・物流企業であるJB Huntとの提携も発表した。

参考:自動運転のWaymoが約2,700億円の資金調達を実施、AlphabetやMagnaらが引き続き出資

シリーズAでいきなり100億円弱の資金を集めた、著名なAI研究者が立ち上げたソフトウェア主導の自動運転企業Waabiも、最初のターゲットはトラック分野としている。

参考:カナダの自動運転ベンチャーWaabiがシリーズAでUberやAuroraの出資を受ける

元々、こうしたロジスティクス分野では、自動運転トラックを開発するPlus.aiやInceptio、TuSimpleらが事業開発を進めているが、参入企業が増えてきており競争が激化している。

 

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ー 技術アナリストの目 -
WeRideもトラックや乗用車でのロジスティクス分野に参入することになりました。業界プレーヤーはこぞって、自動運転で比較的短期的にマネタイズできる可能性のある、この分野に参入する動きになっており競争が激化しています。買収は時間とリソースを買う有効な方法であり、今後もこうした自動運転企業による買収は起こってくることが予想されます。

【世界の自動運転技術動向の調査に興味がある方】

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