医療グレードの心電(ECG)解析AIを開発しているベンチャー企業のCardiologsが、スマートウォッチを使った心臓モニタリングソリューションを発表した。

増加するスマートウォッチのECG取得

Apple WatchやFitbit Senseなどのハイエンド機種では、すでにそのスマートウォッチに搭載された電極から、心電(ECG)データを読み取ることができる。また、Withingが2年程前に発表したMove ECGのように、ECGのモニタリングに特化した低価格のスマートウォッチも登場している。

(補足)なお、Apple WatchやFitbit Senseが米国の医療機器認定であるFDAの認可を得ているのに対し、Move ECGは欧州の医療機器認定であるCEマークの取得までで、現時点でFDAの認可は得られていない。

不整脈という重要な兆候を検知することができるECGの解析は、その重要性を増している。

心電解析AIを開発するCardiologs

そうした中で、心電(ECG)解析AIという、データ解析に特化したベンチャー企業が出現している。2014年にフランスパリで設立されたCardiologsはその1社だ。

現在同社の資金調達額はシリーズAで累積23.1m$となっており、スタンフォード大学のインキュベートVCであるStartXなどから出資を受けている。

同社が開発しているAIは、ECGデータを解析することに特化したアルゴリズムで、ディープラーニングがベースとなっている。臨床医がECGデータをCardiologsプラットフォームにアップロードすると、ECG信号内のさまざまな電波(P、QRS、T ※1)をセグメント化することで、ECGの波形を構成する要素を特定し、解析をする。ディープラーニングにより機械学習されたアルゴリズムは、ECG信号の異常を検出し、臨床医に提示することができる。同社が学習したアルゴリズムは2,000万件のECGデータをベースに最適化したものだ。

※1 心電(ECG)は、その波の高さや幅によっていくつかの種類に分類される。詳細はこちらを参考。

同社は、心電解析に特化したAIであるがゆえに、多様な種類の心臓異常イベントを検出することができる。

検知可能な心臓異常イベントの例:

  • 心臓の一時停止
  • 房室ブロック
  • 心房細動または心房粗動
  • 心室性頻脈
  • 心室性期外収縮(PVC)
  • 徐脈、頻脈 等

通常、Apple WatchやFitbit Senseなどで検知できる心臓の異常イベントは、不整脈の中でも代表的な心房細動となる。しかし、実際には様々な種類の心臓イベントが存在しており、心電解析プレーヤーはこうした細かい分類・検出を得意とする。

参考:心電センサのAliveCorがカリウムモニタリングの開発でアストラゼネカと協業を発表

スマートウォッチで測定されたECGデータの解析に対応

同社は今回、スマートウォッチで測定されたECGデータの解析に対応したクラウドプラットフォーム「Cardiologs RPM」を発表した。

「スマートウォッチのユーザーはいつでも簡単にECGを取得できますが、その情報の共有と処理は依然として課題です。」とCardiologsは語る。

また、医療現場ではスマートウォッチで測定されたECGデータを心臓専門家が受け取る体制もまだ整っていない。

Cardiologsが今回発表したクラウドプラットフォームは、心電データの解析だけではない。安全でシームレスな自動ECGデータ転送や、医師がECGデータをレビューしやすい様な効率的なワークフローを提供し、患者エンゲージメントを高める患者向けモバイルアプリを含む、医療機関と患者の一環した体験を実現する。

同社の最近の研究では、スマートウォッチで収集されたECGデータを使用し、300を超える一般的に使用される薬剤に関連する、生命を脅かす危険性のある心調律障害であるQT延長症候群のモニタリングにも成功した。

 

同社HPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
これまでは心電解析AIのプレーヤーは主にホルター心電計などの医療機器から取得したECGデータをソースとしていました。将来的には、徐々にスマートウォッチと医療AIが連動してくる流れになりますが、その一例として捉えることができます。

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