スマートウォッチの大手企業の1社であるZepp Health(元Huami)が、医療画像スクリーニングのベンチャー企業Neuro42に出資をしたことが発表された。

今回の出資は、Neuro42のシリーズAに伴うもので、Zepp Healthは2.4m$(2.6億円)を出資している。このラウンド全体では、Neuro42は6.5m$(7.1億円)の資金を調達したという。

磁気共鳴画像技術を使ったデバイスを開発

Neuro42は米国サンフランシスコを拠点としているベンチャー企業で、磁気共鳴画像(MR画像)技術を使ったデバイスを開発している。同社の技術は、磁気共鳴に関する世界的に有名な研究機関であるAthinoula A. Martinos Center for Biomedical Imaging(※1)からライセンス供与を受けている。

※1 Athinoula A. Martinos Center for Biomedical Imagingは、マサチューセッツ総合病院の放射線科の研究機関であり、MIT・ハーバードメディカルスクールと提携をしている。神経科学、腫瘍学、心臓病学、その他の臨床領域の課題を解決するツールを開発している。

Neuro42がライセンス供与を受けた技術は、低磁場MR画像技術である。

現状のMRIは高磁場のものであるが、近年、低磁場MR撮像技術が開発されており、実用化が期待されている。低磁場MR画像は、高磁場のものより撮像の精度・分解能は劣るが、機器のコストを抑えられることが特徴となっている。

Neuro42はこの技術を使って、ポータブルで使いやすい新しいMRIや、スクリーニング・診断に使うための医療画像ロボットを開発している。

医療画像ベンチャーに多数投資をするZepp Health

Zepp Healthはいわゆるスマートウォッチメーカーであり、前Huami時代から持つブランドであるAmazfitと、社名変更後のブランドZeppを持ち、世界でスマートウォッチを拡販している。IDCによると、2021年1Qの成人向けスマートウォッチの世界出荷台数でトップ4にランク付けされている1)

同社はHuamiからZepp Healthという社名変更に現れているように、ウェアラブルデバイスを使ったヘルスケア領域へ注力している。

参考:Zepp Health(元Huami)がウェアラブルチップや血圧測定技術を発表

その一環で、戦略的に医療画像ベンチャーへ多数投資をしている。

例えば2021年1月には、同じくポータブルMRIを開発しているPromaxoへ出資、その翌月の2月には、ベンチャー企業のHyperfine ResearchのシリーズDに参画している。どの企業も進展する医療画像技術を活用して、MRIの小型化を狙ったものとなっている。

 

Neuro42のHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
Zepp Health(元Huami)の医療・ヘルスケア分野への投資の勢いを感じます。Huami時代は中国製スマートウォッチの1プレーヤーという形でしたが、社名変更する少し前から明確に医療・ヘルスケア領域へ注力するようになりました。同社のやり方は特徴的で、この短期間でポータルブルMRIベンチャーに3社も出資していることからわかるように、破壊的イノベーションになり得る領域を見定めて、面で網をかけていくという方針なのだと想定されます。日本のメーカーだといきなり医療分野に投資をすることは絶対にしないのですが、中国メーカーは一気に医療分野にも出ていくあたり、変化のスピード感がすごいです。

【世界の磁気共鳴画像技術の動向に興味のある方】

世界の磁気共鳴画像技術を開発するベンチャー企業や大学研究機関の技術動向調査、ロングリスト調査に興味がある方はこちらも参考。

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参考文献:

1) 2021 Q1: Zepp Health Ranked in the Top 4 in Global Adult Smartwatch Shipments, PRNewswire=KYODO JBN(June 1 2021)