中国のリチウム原材料の供給サプライヤであるJiangxi Ganfeng Lithium(赣锋锂业)は、中国国営自動車メーカーである東風汽車の研究部門の東風テクノロジーセンターとと、固体電池の開発で合意をしたことが複数の中国メディアで報道されている。

Ganfeng Lithiumによる半固体電池の開発

Jiangxi Ganfeng Lithiumは、リチウムイオン電池の原材料となるリチウムを生産し、供給している大手原材料メーカーだ。

同社は世界の自動車OEMにリチウムを共有しており、例えば2019年にフォルクスワーゲンと、バッテリーセル用のリチウム供給に関する長期の覚書を締結しており、10年間に渡ってリチウムを供給することが発表された。

一方で、Jingxi Ganfeng Lithiumは次世代のリチウムイオン電池の開発に多額の資金を投入している。すでに通常の液系リチウムイオン電池は生産・供給をしており、正極にLFP、負極にカーボンを使ったリン酸鉄リチウムイオン電池を生産している。

さらに、同社が注力しているのは固体電池の開発だ。

2020年の年次報告書1)によると、高エネルギーかつ高い安全性を実現する固体電池の開発に注力していることが触れられている。同社は2019年から固体電池のパイロット生産ラインを建設。第一世代の固体電池の生産を年産数百MWh級のサンプルラインが存在している。

なお、この第一世代はいわゆる半固体電池であり、電解質に固液融合の材料を使っているとされる。同社の特許によると2)、この半固体電解質は多層のフィルム状部材となっており、固体電解質単層と溶媒を組み合わせたものとなっている。なお、電解質の組成は特許では指定されておらず、硫化物系も酸化物系も候補物質として挙げられている。この電池は重量エネルギー密度が235~280Wh/kgのものとなっており、現時点でサンプル提供できる電池は、現状のハイニッケル系のLIBとあまり変わらないスペックだ。

同社は現在、第二世代の固体電池を開発している。この第二世代は現時点で、重量エネルギー密度が350Wh/kg、サイクル寿命は400回近くとなっていることが発表されている。

東風汽車がE70モデルへ搭載する可能性

今回の提携に関する報道では、東風汽車のE70へ固体電池モデルとして、2022年の旧正月までに搭載する可能性があるという。

(補足)ただしこの件について、東風汽車、およびGanfeng Lithium双方の発表について中国語ソースも含めて調査したが、両社ともまだ正式な声明は出していないように見える。

なお、Ganfeng Lithiumは東風汽車と2021年6月に、固体電池やその他の新しい電力電池の開発、および固体電池の実証作業に幅広く協力する提携を発表している。

電気自動車への半固体電池の搭載は、NIO(蔚来汽車)も狙っていることがNIO Day2020で発表されていた。NIOはサプライヤを明らかにしていないが、CATLや他の中国の固体電池開発に従事している企業の名前が挙がっている。

参考:NIOがEV高級セダン最新モデルET7と固体電池や最新LiDARについて発表

 

Jiangxi Ganfeng LithiumのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
まだ両社からの正式な声明が確認できていませんが、6月にも提携を発表していたため、今回はその延長上の動きにあると見られます。あくまで全固体電池ではなく半固体電池であるようですが、サイクル寿命がまだ400回程度であり、通常のLIBで要求される3,000~4,000回からするとかなりの開きがあります。両社の動きについては今後も追いかけたいと思います。

参考文献:

1) Ganfeng Lithium Co., Ltd. Annual Results Announcement For the Year Ended 31 December 2020

2) CN112151858 – MULTIPHASE ELECTROLYTE FILM FOR SOLID-STATE BATTERY, PREPARATION METHOD OF MULTIPHASE ELECTROLYTE FILM AND ALL-SOLID-STATE LITHIUM BATTERY