中国の電池企業であるSVOLT Energy Technology Co., Ltd.(蜂巢能源科技有限公司)が、シリーズBの資金調達を実施したことを、7月30日に発表した。

中国大手事業会社も出資

今回の資金調達ラウンドでは、SVOLTは合計で100.28億元(約1,700億円)の資金を調達した。

中国銀行グループ投資(BOCGI)が主導し、技術移転・商業化のための国家ファンドのサブファンド、Country Gardenベンチャーキャピタル、Shenzhenキャピタルグループ、CCB Investment、IDGキャピタル、Oceanpineキャピタル等の様々な中国系VCが参画し、中国スマートフォン大手のXiaomiや、中国の大手重機メーカーのSanyなどの大手事業会社も参画している。また既存投資家のSDICとJZ Capitalも追加出資を行った。

長城汽車からのスピンオフ電池企業

SVOLTは、江蘇の長州に本社を置く電池企業だ。

元々は長城汽車のバッテリービジネスユニットが2018年に分離してスピンオフとして設立された企業であり、同社によると、2012年から電池ビジネスについては長城汽車内で事業化可能性を探ってきており、R&Dに長年注力している。

SVOLTはベンチャー企業というにはやや巨大である。1,400人の研究開発エンジニアを含む約3,100人の従業員がおり、2025年までに電池工場建設含む投資に約4,300億円投じることが表明されている。

世界中に7つのR&D拠点を持ち、5つの製造拠点を保有している。

先端リチウムイオン電池を開発・製造

同社が開発・製造している先端リチウムイオン電池は、現在製造している先端セルでは正極に三元系のNCM、負極にグラファイトを使っている。材料構成はよくある形であるが、同社の特徴は先端的な材料技術の研究だけでなく、電池構造も工夫している点にあり、①スタッキングバッテリー構造を採用、②CTP(セルトゥパック)を採用している。

通常、電極や電解質、セパレーター等の主要部材を、巻いてモジュールとして組み立てる。しかし、この巻き線形状は四隅に空間ができてしまい、効率的にスペースを活用することができない。SVOLTはスタッキング構造と言われる形状にすることで、四隅のスペースを効率的に使うことができる。結果としてエネルギー密度は従来型に比べて5%向上するという。

スタッキング構造のイメージ

同社公開情報より作成

SVOLTのEV向け電池セルのエネルギー密度は、現行のものでおおよそ220~250Wh/kgとなっており、次世代の負極にシリコンを使ったタイプの電池も研究開発しており、こちらは320Wh/kgがターゲットとなっている。

同社は他にもコバルトフリーのセルや、固体電解質を使った固体電池も研究開発している。なお最近、コバルトフリーのLNMOを使った同社の電池が長城汽車のCherry CatというSUVに搭載されることが発表されており、通常のNCMのものに比べて8%のコスト減で、245Wh/kgを実現している。

約2,700億円相当の受注を獲得

SVOLTによると、同社はフランスのPSAとイタリアのフィアット・クライスラー・オートモービルズが合弁で設立したStellantisから160億元(約2,700億円)相当の受注を獲得している。

他にも長城汽車、吉利汽車、東風汽車、PSA、SF汽車、ENOVATE、Leap Motor、Hozon Autoなど、国内外の自動車メーカー25社へのセールスポイントを確保しているという。SVOLTのバッテリーシステムを搭載した10以上のモデルが発表されており、近く電池の量産が開始する見通しだ。

そうした背景から、世界各国での新規生産拠点の建設が急務となっている。そのため、シリーズBで調達した資金は、主に新技術の研究開発と新工場の建設に使用される。

なお、SVOLTの生産能力は2025年に200GWhを超えると予想されている。

 

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ー 技術アナリストの目 -
急速にその受注を伸ばし、一気に生産体制を整えるべくシリーズBで1,700億円という巨額の資金調達となりました。CATLのように先端技術の研究開発に注力し、ハイエンド市場でプレゼンスを築く戦略です。今後も固体電池含めて新しい発表があるでしょう。

【世界の電池技術動向に興味がある方】

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