ADAS用の小型LiDARを開発する米国サンフランシスコのベンチャー企業であるCeptonが、SPACで米国新興市場のナスダックに上場することが、8月5日に発表された。

一連の取引を通して約250億円を調達

Ceptonは、特定買収目的会社のGrowth Capitalと合併を行い、ナスダックに上場する。

今回の取引において、Ceptonの企業価値は1,500m$(約1,640億円)と評価されており、合併後の推定株式価値は約1,800m$(約1,975億円)と予想されている。

一連の取引において、CeptonはGrowth Capitalの信託口座からの172m$と、58.5m$の完全にコミットされた普通株式からなる、約231m$(約250億円)の資金を得ることになる。

この取引は2021年の第4四半期に完了する予定となっている。

可動部・ミラー無しの独自技術MMTによるLiDAR

Ceptonは2016年に米国サンフランシスコで設立されたベンチャー企業だ。

MMT(マイクロモーションテクノロジー)と呼ばれる可動部・ミラー無しの独自技術をコアにLiDARを開発している。通常のLiDARはモーターを使って回転させるメカニカル方式や、より可動部を少なくしたMEMSミラーを使った方式などが市場で使われているが、CeptonのLiDARは可動部・ミラー無しであることから、より耐久性に優れ、大量に安価に製造ができる。

同社の製品ラインナップから見えるLiDARのスペックは以下の通りである。

CeptonのLiDARラインナップの例(すべての製品が記載されているわけではない)

Cepton公開情報より筆者作成

CES2021でも同社の小型LiDAR「Nova」の発表・展示が行われ、100$未満を切るLiDARとして話題になった。ただし検出距離が短距離レンジであるため、死角検出、近距離での小さい物体検知、自動駐車アシスト、車両のフリースペース推定などの限定された用途に限られる。

参考:【CES2021】自動運転・ADASのコア技術となるLiDARの海外ベンチャーまとめ

Vista X 90は自動運転・ADAS用であり、検出範囲やFOV、角度分解能についてはほぼ、現在開発が進む自動車MEMS LiDARと同等のスペックとなっている。しかし、CeptonのLiDARの特徴は小型であること、そして安価であること、可動部が無いため耐久性が高いこととなる。

比較的短期間でスケーラブルで安価な生産を実現するため、システムを複雑にしないよう、光源には1,550nmではなく従来の905nmを使い、独自に設計されたLiDAR用の超小型のASIC、そして受光部にはSi APD(内部増倍機能を有する高速・高感度なSiフォトダイオード)を組み合わせる。

小糸製作所との資本業務提携によるOEMへの拡販

小糸製作所はCeptonに過去に出資を行い資本業務提携を発表しているが、今回のSPAC上場にあたり、小糸製作所はPIPEで58.5m$の追加出資を行うこととなっており、さらにその提携関係は深まる。

Ceptonの事業計画上も、小糸製作所経由でのOEMへのアプローチは重要なアクションの1つだ。

Ceptonは2021年7月に、米国デトロイトを拠点とするグローバル自動車OEMから、連続生産でのADAS向けLiDARの受注をしたことを発表している。この受注は、小糸製作所とのパートナーシップに生まれたもの、としており、2023年までに生産開始する計画となっている。

 

同社HPはこちら


車載用LiDARの技術動向について整理した記事はこちらも参考。

参考:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~


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参考:(特集) 社会実装が始まる世界のロボタクシー市場動向


ー 技術アナリストの目 -
またLiDARベンチャーのSPAC上場です。やや後発であり、もはや過当競争状態であることも影響しているのか、SPACにより調達する資金規模はそこまで大きく無く、これなら通常のVCからのエクイティファイナンスを実施するというので良いのではないか?と思わなくもないですが、今回のSPAC上場というアクションとなりました。Ceptonの特徴は、短中距離における低コスト・高耐久性・スペックのバランスが良いことであり、ADAS領域で受注を拡大できるか、今後も要注目となっています。

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