自動運転車向けの長距離・高解像度レーダーを開発している米国カリフォルニア州のベンチャー企業であるMetawaveが、同社の開発した76-81GHzビームフォーマーチップα版サンプルと評価ボードを、トヨタとデンソーの合弁会社であるMIRISE Technologiesに納入したことを発表した。

メタマテリアルによるビーム制御

Metawaveは、レーダーで一般的なフェーズドアレイによるビーム制御を行わず、メタマテリアルを使ったビームフォーミング・ステアリングを行う。メタマテリアルとは、自然界の物質では起きないような光との相互作用をする新しい人工材料であり1)、その構造によって光を任意の方向に屈折させることができる。

近年、レーダーでの利用や5G関連でのアンテナ2)などで応用が始まっている。またLiDARのビームステアリングでも利用が研究レベルで模索されている。

参考:韓国POSTECHとフランス国立科学研究所が開発したナノフォトニクスベースLiDAR

Metawaveが開発した自動運転・ADASレーダーセンシング用のSPEKTRAプラットフォームは、レーダーの特徴である外部環境(気象)条件に対してのロバスト性を持ちつつ、優れた水平・垂直方向の角度分解能を実現する。300メートルを超える車両や、200メートルを超える歩行者を、長距離で最高の角度分解能と精度で、一貫して検出することができる。

また、ハードだけではなくソフトウェア面でも、2021年初頭に、MetawaveはSPEKTRAレーダーがリアルタイムのオブジェクト分類とラベリングを実行し、94%を超えるラベリング精度を実現する独自の人工知能(AI)AWARE™プラットフォームも実証した。

MIRISEが評価

昨年発表されたこのメタマテリアルを使ったSPEKTRAレーダーは、トヨタ・デンソーの合弁会社であるMIRISE Technologiesが評価をしており、今回、同社への納入という1つの成果へと繋がった。

デンソーのコーポレートベンチャーディレクターであるTony Cannestra氏は、次のように述べている。

「私たちは、自動車輸送を、世界にとってより安全で快適にするための高度な技術に取り組んでいるMetawaveや、その他の新興企業を引き続きサポートできることを嬉しく思います。」


レーダーベンチャーの資金調達上位企業のまとめはこちらも参考。

参考:自動運転のカギとなるレーダー(Radar)センシングベンチャーTOP5


ー 技術アナリストの目 -
メタマテリアルを使ったレーダーやLiDARはまさに開発の最前線にあり、自動車業界だけでなく様々な業界で注目されています。今回、まずは実証のためのMIRISEへの納入が決まったわけですが、あくまで実証フェーズであるため技術開発は引き続き必要になると想定され、今後も注視していきたいと思います。

【世界のレーダーセンサーやメタマテリアル技術動向に興味がある方】

世界のレーダーセンサーベンチャーやメタマテリアル素材技術ベンチャー、大学研究機関も含めた先端技術動向調査に興味がある方はこちらも参考。

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参考文献:

1) 徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所、光を操るメタマテリアルを作る(リンクはこちら

2) 5Gエリア拡大に貢献「メタマテリアル反射板」を開発  ~ローカル5G電波の反射公開実験に成功~、電気興業株式会社プレスリリース(リンクはこちら