コンシューマーエレクトロニクスや生体センシングに活用できるハイパースペクトルセンシング技術を開発しているベンチャー企業のSpectricityが、シリーズBで16m$(約17.6億円)の資金を調達したことを、8月3日に発表した。

研究機関Imecからのスピンオフベンチャー

Spectricityは2017年に設立されたベルギーのベンチャーで、CMOS技術を使用したスペクトルセンシングソリューションを開発しているファブレス企業である。

同社の技術の出自は、ベルギーの国際研究機関Imecであり、Imecで10年以上研究開発された技術を実用化・事業化するために独占ライセンス契約を受けて、設立されている。

今回の資金調達ラウンドでは、グローバルVCであるAtlantic Bridge、そして中国系ファンドのCapricorn Fusion China Fund、中国のハイテク特化ファンドのShanghai Semiconductor Equipment and Material Fund(SSMEF)、ベルギーの研究機関Imec傘下のインキュベーションファンドであるimec.xpand、ベルギーのVCであるXTRIONが出資を行っている。

今回の資金調達により、Spectricityが調達した資金の累計は2,000万€(約25.8億円)となる。

ハイパースペクトルセンシングとは

同社が開発しているハイパースペクトルセンシングとは、多数の波長帯を、同時に高い分解能で検出することができるハイエンドセンシング技術である。

通常の民生用イメージセンサーでは、RGBフィルターが使われており、RGBで表現される色と、限定された分解能での撮像が可能となっている。

一方でハイパースペクトルセンシングでは、高い分解能で細かく分光することで、通常のRGBではわからないような(目視ではわからないような)微妙な色の違いや、物質の状態判定などが可能になる。

生体センシングや食品・化粧品に利用

同社によると、開発しているハイパースペクトルセンサーは心拍数、血液中の酸素量、肌の水分量を検知することが可能なようであり、こうした生体センシング用途で利用される見込みだ。

また、ハイパースペクトルイメージャーを使用して肌の色を化粧品に完全に一致させたり、食品が新鮮かどうかを判断することもできるという。

Spectricityの特許取得済みのスペクトルセンシング技術は、ハイパースペクトルレベルでの分解能を持ちながら、スマートフォンやウェアラブルデバイスに適合するのに十分な小型で低電力のセンサー実現している点に特徴がある。

今回調達した資金は、大量生産を大幅に加速し、主要な人材を採用し、パートナーシップを拡大し続けることに活用する見込みだ。

 

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ー 技術アナリストの目 -
ハイパースペクトルカメラ・センシングは、食品などの成分分析・状態評価、非破壊検査、研究開発用途など、様々な用途で使われており、今後市場が大きく拡大することが期待されています。多くは産業用(品質検査など)・研究用・食品用などを主要アプリケーションとしており、Spectricityのように生体センシングに着目して開発を進めている企業はあまり多くありません。今後どのように使われていくのか、引き続き注目したいと思います。

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