Comma.aiは米国サンフランシスコのベンチャー企業である。既存の自動車に、後付けでADAS機能を実装することができるカメラベースのシステムを開発している。同社は7月31日、最新のシステムとなるComma Three Devkitを発表した。

後付けでADAS機能を実装できるカメラベースシステム

Comma.aiのシステムはカメラベースとなっており、他のセンサー(LiDARおよびレーダー)は使用しない。今回新しく発売されたComma Threeは、トリプルカメラシステムとなっており、3台の1,080pカメラのダイナミックレンジは120dBを超える。優れた高精度GPSも備え、前回までのシステムComma Twoよりもハードウェア面が強化されている。

ソフトウェアは、同社が開発したオープンソースソフトウェアであるOpenpilotを使用する。開発者はハードウェアを購入し、わずかな時間で車両へ取り付けることができる。そしてOpenpilotをインストールすると、すぐに既存の車両にADAS機能を実装することができる。具体的には、アダプティブクルーズコントロール(ACC)と、自動レーンセンタリング(ALC)の機能が利用できるようになる。

導入価格は2,199$であり、前世代のComma Twoが1,000$前後だったのと比べると大幅に価格は高くなっているが、ADASの機能が、後からわずか20~25万円程度で付けられるというのはユーザーにとっては負担が少ない(ただし、現時点ではあくまでDevkitである点は注意)。

なお、取り付け可能な対象車種は100車種を超えており、トヨタやホンダ、現代など様々なメーカーの自動車に対応している。

同社のユーザーは、まだ必ずしも数は多く無いが、ユーザー数は成長し続けている。Openpilotのユーザーは、2018年下半期の1週間あたり275ユーザー未満から、2020年末には1週間あたり2,750ユーザー以上に増加しており、Openpilotを使った走行距離は、累計5,000万マイル以上となっている。

なお、よりハイエンドな競合には、Ghost Locomotionがいる。Ghost社は8台のHDカメラと5台の強力なプロセッサを車のガス、ブレーキ、ステアリングに接続することで運転支援・自動運転機能を後付けで実装することを狙っている。

参考:既存車を自動運転化するGhost LocomotionがシリーズDで約110億円を調達

Comma.aiはもっと手軽にADAS機能を実装することを狙っており、ポジショニングの違いがある。

 

Comma.aiのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
カメラ方式は、テスラも最近一部車種でレーダー使わずにカメラのみで、レベル2のADAS機能を実装していますが、そのR&Dとアルゴリズム開発には多大な投資を行っており、スーパーコンピューターへの投資も明らかにされています。それでも、最近、満月を黄色信号とご認識する事案が発生していることがSNSで話題になっています。Commaのカメラベースアプローチも、現在はユーザー数が少ないため問題が表面化しにくいですが、今後ユーザーを増やそうとすると、テスラのような問題が起こる可能性が考えられそうです。こうしたカメラだけを使うという問題に対して、どのように技術が乗り越えていくのか、引き続き注目したいと思います。

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