血糖値測定デバイスや管理アプリを提供しているLifeScanが、Fitbitと複数年に渡る包括的な提携関係を締結したことを、8月10日に発表した。

LifeScanの管理ツールとFitbitが連携することで、日常生活の活動や栄養、睡眠などのライフスタイル・生活習慣の要因が、血糖値にどのように影響するかを完全に把握すると同時に、健康的なライフスタイルの変化につながるツールを提供するという。

血糖値管理市場の大手であるLifeScan

LifeScanは糖尿病患者を対象とした、フィンガープリック(指に針を刺す器具)による血糖値測定デバイスや、血糖値を管理するアプリ、そして血糖値の管理を支援するためのコーチングサービスをOneTouch®というブランド名で提供している。同社の製品を使ったユーザーは述べ2,000万人存在しており、40年以上、製品・サービスを提供している血糖値管理市場の大手企業の1社だ。

(補足)ちなみに、同社は元々は医療機器大手のJohnson & Johnson(以下J&J)の一部門であったが、J&Jの血糖値測定器からの戦略的撤退に伴い、2018年にプライベートエクイティに売却し、現在Lifescanは同PE下で経営再建中となっている。

LifeScanは測定やアプリによる管理だけでなく、日々の糖尿病治療・血糖値コントロールのための教育にも力を入れている。具体的には、LifeScan糖尿病研究所(LifeScan Diabetes Institute)を立ち上げ、10年以上、糖尿病治療の方法について研究を医療従事者と協力しながら行っており、登録した医療従事者はLifeScanが蓄積したベストプラクティスや事例のデータにアクセスすることができる。

Fitbitとの提携で生活習慣アプローチを強化

FitbitがLifeScanと提携することで、LifeScanはこれまでなかった、運動・食事・睡眠といったデータと連携することができるようになる。これらの生活習慣は、糖尿病の症状改善に大きく関わる。

LifeScanのElizabeth Holt博士はこう述べている。

「糖尿病は21世紀で最も急速に成長している健康上の課題の1つであり、食事、活動、体重、血糖値を追跡するための新しく便利なアプローチを人々に提供することは、病気の経過を効果的に変えるための重要な要素であると信じています。」

最近の研究では1)、台湾と日本でサービスを展開しているHealth2Syncの糖尿病ケアアプリと、Fitbitを使うことで、台湾での臨床試験の結果として糖尿病Ⅱ型の患者の症状が改善したことが明らかにされている。

今回の提携により、LifeScanのOneTouch®のソリューションの1つのオプションとして、ユーザーはFitbit Inspire 2™とFitbitプレミアムにアクセスすることができるようになる。今年の秋にも米国で利用できるようになる見通しであり、2022年の早い段階で、医療保険の還付金が適用される予定だ。

 

LifeScanのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
Fitbitは以前より、連続グルコースモニタリングの急成長ベンチャーであるDexcomとの提携を行うなど、糖尿病管理市場への進出を狙っていました。生活習慣改善・マネジメントによる糖尿病の改善・治療の親和性が高く、Fitbitの強みと相性が良いことが背景にあります。Fitbitが狙いたいのはFitbit Premiumのサブスクユーザーへの流入だと想定されますが、参考文献で示したような臨床的な改善例が数多く出てくると、よりインパクトのある動きに繋がってくるでしょう。

【世界のデジタルヘルス・生体センシング動向に興味のある方】

または、個別調査での網羅的なロングリスト調査や、特定技術動向のベンチマーク、グローバルでの技術探索に興味がある方はこちら。

詳細:先端技術調査・リサーチ


参考文献:

1) Integrating Fitbit Wearable Devices into Diabetes Care Leads to Significant Improvements in Blood Glucose and HbA1C, Finds Health2Sync Clinical Study(リンクはこちら