米国国防総省(DoD:US Dept of Defense)と、イスラエルの国防省、および米国・イスラエル間の貿易促進のための研究機関であるMerage Instituteが、モバイルスタンドオフ自律屋内機能(MoSAIC)のコンペティションを実施することを発表した。

MoSAICチャレンジ

このMoSAICチャレンジは、全体で5つのチャレンジから構成され、3つはバーチャルでの実施、2つは実環境での実施を想定している。

この5つのチャレンジは以下のように構成されている。

  • 屋内ナビゲーション
  • 部屋のマッピング
  • 人間/オブジェクトのタグ付け
  • 戦術的なロボットシステム
  • 壁を通しての人間の存在の検出(Through Wall Imaging)

このプログラムは、世界中の新興企業や大学研究機関からエントリーを受付し、最高のイノベーターには、合計60万ドル(約6,500万円)の現金やその他の賞が授与される。

今回のプログラムに際して、米国側のプログラムの担当者はこう述べている。

「トンネルや崩壊した構造物に見られるような複雑な障害物をうまく乗り越えることができる、人工知能、小型マルチロータードローン、戦術的な地上車両の革新的な使用を期待している。」

また、イスラエルのプログラム執行部のHead of Future Autonomous SystemsであるRyan Gity氏はこう語っている。

「MoSAICの下でのこれら5つの課題の組み合わせを解決することにより、両政府は次世代の屋内ロボティクスを開発することができるでしょう。」

なお、本コンペティションの時間軸は2021年9月23日までエントリーを受付しており、各ミニチャレンジが順次開催され、2022年春にイスラエルのテルアビブで開催される最終物理イベントで、勝者が発表されるという。

米国・イスラエル間のR&Dの仕組み

今回のスキームは米国とイスラエルの国防省間でのR&Dを促進する仕組みであるが、こうしたスキームは実は他にもある。

例えば、エネルギー分野でも米国とイスラエルは国家的なコラボレ―ションを行っており、BIRDエネルギープログラムでは、全固体電池の開発を含む8つのエネルギー研究開発プログラムが発表されている。

参考:米国とイスラエルのエネルギー省が共同で全固体電池を含む8つの次世代エネルギープロジェクトへ投資

他にもアグリテック分野での研究開発プログラム、ヘルスケア分野での二国間パートナーシップなど、必ずしも軍事分野に留まらない。米国とイスラエルのエコシステムは非常に密接に関わっており、両国のR&D・コラボレーションを促進する仕組みがある。


ー 技術アナリストの目 -
DoDや傘下のDARPAが開催するコンペティションは、直接的には軍事での利用を想定して開催されますが、過去には自動運転車の原型となったDARPAグランド・チャレンジのように、自動車やロボティクスといった分野のイノベーションが起こる源流にもなっています。今回の屋内自律ロボットの操縦技術を開発するベンチャー企業や大学研究機関から、軍事以外でどのように用途が発展していくのか見ていくのはとても興味深いポイントです。コンペティションの勝者は後々発表されるはずなので、また当メディアでもモニタリングをしていきたいと思います。