8月19日に、英国の7団体(民間企業・大学・研究機関)が全固体電池のプロトタイプ開発でコンソーシアムを組成したことを発表した。全固体電池の用途は、自動車用途を対象としている。

コンソーシアムメンバーの一覧

今回のコンソーシアムは、英国の電池ベンチャーであるBritishvolt含む、材料メーカー・装置メーカーなどの事業会社、大学研究機関が含まれている。

  • Britishvolt(電池ベンチャー)
  • Faraday Institution(電気化学エネルギー貯蔵の独立研究所)
  • Emerson&Renwick(印刷・コーティング装置メーカー)
  • ジョンソン・マッセイ(触媒や貴金属化合物等の材料メーカー)
  • オックスフォード大学(Faraday Institutionとの全固体電池プロジェクトに従事)
  • UK Battery Industrialization Center(電池製造のスケールアップを手掛ける)
  • ウォーリック大学(英国のバッテリーの研究開発をリードする研究ラボ)

このコンソーシアムプロジェクトは、2027年末までの、それぞれ10GWhから総容量30GWhまでの3つの開発・生産フェーズで構築される。

現時点での目標としては、生産のフルキャパシティーに達する時には、ギガプラントが稼働している状態となり、主には自動車産業を対象とした年間約30万個の電気自動車バッテリーパックに対して、十分なセルの供給生産能力を備えることになる。英国で最初の大型フルサイクル電池セルのギガプラントになることを目指す。

なお、英国の独立研究機関であるFaraday Institutionは、全固体電池を含むバッテリー5テーマに研究資金を集中的に投じる方針を発表している。

参考:英国の電池研究コンソーシアムのFARADAY INSTITUTIONが全固体電池含む5テーマに34.5億円の研究資金コミットを発表

技術を他社から確保するBritishvolt

今回のコンソーシアムの核となっているBritishvoltは、技術を他社から確保しつつ独自に研究開発も行い、垂直的に電池セル生産工場を英国に立ち上げることを狙っている。2019年12月に設立され、設立からわずか2年弱しか経っていない同社であるが、その後、部材メーカーや原材料メーカーとのパートナーシップを締結を進めている。

発表されたコンソーシアム自体は全固体電池の実用化に焦点があたっているが、Britishvolt自身は2023年の製品発売を目標に、同社のギガファクトリーで生産するための電池技術の選定を進めている。

 

BritishvoltのHPはこちら


- 技術アナリストの目 -
ノルウェーの電池ベンチャー企業であるFREYRと近いモデルですが、他の電池ベンチャーのように、現時点で独自のセル技術がある、というわけではなく、先にギガファクトリーの箱を用意して、必要な技術と人を外から集めながら、外部パートナーと提携をして、電池セルの生産を垂直立ち上げするというビジネスモデルです。ほぼ国策と言っても良いでしょう。2017年に英国政府はバッテリ―産業への戦略投資を産業政策の1つとして位置付けており、Britishvoltは国の産業政策に乗っかって事業を推進しています。一方で、FREYRと同様に、まだ生産するものが固まっているわけではないので、本当に優位性のある電池メーカーになるかどうか現時点では不透明であるという懸念があります。

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