米国サンノゼに拠点を構えるベンチャー企業のSakuuは、3Dプリンタを使った全固体電池の製造技術を開発している。同社は、8月18日に3Dプリンタによる全固体電池製造のパイロット施設の建設を開始したことを発表した。

3Dプリンタによる全固体電池製造技術

Sakuu(前KeraCel)は、2016年に米国サンノゼで設立されたベンチャー企業だ。

Sakuuは自動マルチプロセス積層造形(AM:Additive Manufacturing)の専門技術を保有している。同社は、AMを全固体電池製造に活用しようとしており、現在、技術開発を進めている。

今年7月には3Ahのリチウム金属固体電池のサンプルを、第1世代バッテリーとして発表している。正極には業界標準のカソード材料、負極にリチウム金属を使い、独自のプリントセラミックセパレーターで構成されている。1つのセルモジュールは30個のサブセルで構成されており、容量はリチウムイオン電池と同等ながら、サイズは最大50%小型化でき、30%軽量になるスペックを実現しようとしている。

AMによる連続生産を想定しているため、大量生産が可能で、安価に製造することができる、というのが同社の主張だ。

建設を開始したパイロット生産ライン

Sakuuは、これまで工場・プロセス設計のRelevant IndustrialとHoneywell Process Solutionsと協力して、全固体電池を製造するためのパイロットラインの設計と開発を行ってきた。

パイロット製造プラントは、Sakuu独自の技術について、これまでラボスケールであった生産キャパシティをスケールアップする。年間最大2.5MWhの全固体電池を生産する能力を備える予定となっている。そして、パイロット施設は2021年末までに稼働する予定であり、戦略的顧客および早期のパートナーに独自の開発用の全固体電池サンプルを提供する。

さらに第2フェーズは、2022年にSakuuAMプラットフォームアレイを利用し、年間最大1GWhの容量の全固体電池を大量生産する予定としている。

日本の武蔵精密工業も出資

Sakuuには、日本の武蔵精密工業も出資を行っている。

武蔵精密工業は四輪・二輪のカムシャフトやトランスミッションギヤを製造している大手メーカーであるが、2019年からSakuuの前身であるKeraCelへ出資を行い、2021年にはシリーズAで追加出資を行っている。

武蔵精密工業は子会社に武蔵エナジーソリューションズという企業がおり、リチウムイオンキャパシタ(LIC)の開発、製造、販売を手掛けている。Sakuu(前KeraCel)への出資は、このエナジーソリューション事業とのシナジーや、AM技術による製造DXを促進するという意図があると想定される。

 

SakuuのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
Sakuuがパイロット生産プラントを立ち上げるということで、同社がこれまでのラボスケールから、正式なサンプル提供フェーズに入ることが明らかになりました。同社はSSBの組成や構造についてあまり詳細を明かしておらず、今後技術についても発表があると思います。3Dプリント固体電池は、商業化にはやや難易度が高いと想定され、AMのアプリケーションとして全固体電池が本当に良いのかどうかはわからないですが、今後の技術情報に関する発表を待ちたいと思います。

【世界の電池ベンチャーの動向に興味がある方】

世界の電池ベンチャー企業、全固体電池ベンチャーや大学研究機関の技術動向調査、ロングリスト調査などに興味がある方はこちらも参考。

詳細:先端技術調査・リサーチはこちら