ベトナム国産自動車メーカーのVinfast LLCが、電気自動車向けLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)の研究開発で、中国の大手電池メーカーであるGotion High-Tech(国軒高科)と提携したことを発表した。

Vinfastは短期ではLFPを採用する可能性

VinfastはVingroupによって2018年に設立されたベトナム発自動車メーカーで、これまで内燃機関の自動車や電気自動車を発売しており、現在のベトナムの自動車市場シェアで5位となっている。

Vinfastは3つの新しい自動運転電気SUVモデル(VF31、VF32、VF33)を発表しており、AIを搭載したハイエンドモデルを発売し、今後スマートEVの領域を強化してく方針だ。

同社はスマートEVを強化するために、最近、バッテリー製造のための子会社VinES Energy Solutions JSCと、基礎研究に焦点を当てたベトナム初のAI研究所であるVinAI Artificial Intelligence Application and Research JSCを設立している。

今回のGotionとのMOUは、こうしたVinFastの一連の電動化戦略を更に強化するものであり、ベトナムでのLFP電池の現地生産を検討していくという。

LFPは熱安定性が高く、コバルトを使わないためNMCに比べて低コスト化も可能となる。ただし、LFPは導電性が悪く、エネルギー密度は相対的に低く、重量エネルギー密度は150~200Wh/kg程度となる。

しかし中国勢は低コストで安全性の高いLFPの生産を加速しており、Gotion High-TechのLFPの生産割合は90%1)で中国5位の電池シェア、BYDはブレードバッテリーと呼ばれるLFPの電池で中国2位の電池シェアとなっている。今年7月には、フォルクスワーゲンがGotionの電池を採用し、ボリュームセグメント向けの第1世代のUnified Cell(統合セル)をドイツで生産すること、そしてGotionの株式の26%を取得し、筆頭株主になることで話題を呼んだ。

Vinfastは、電気自動車向けの固体電池の開発のために、台湾のProLogiumともJVを設立し、共同開発に取り組んでいる。同社によるとこの固体電池は2023年~2024年のEVに搭載する目標とのことである。

参考:台湾の全固体電池企業ProLogiumがベトナム国産自動車OEM VinfastとJVを設立

また、マレーシアのpaultanなどの報道によると、イスラエルのStoreDotとも提携を行い、同社が開発しているシリコン優勢アノードベースの電池を共同開発しているという。

そのため、短期的にはLFP、中長期ではシリコンアノードLIBや固体電池を実用化する戦略であると想定される。

Gotionの会長Zhen Li氏はこう述べている。

「Gotion High-Techは、その最先端の技術と電池の豊富な経験を、VinFastの電動化戦略をサポートするために使っていきます。GotionのLFPバッテリーを搭載した、VinFastの電気自動車モデルは、消費者の間で人気になるに違いありません。」

 

Gotion High-TechのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
VinFastが急速に電池やAIの技術に投資を行っており、ベトナム発のスマートEVプレーヤーになるべく、テクノロジーの開発や外部パートナーとの連携を加速させています。足元の販売台数も成長を続けており、直近の7月でベトナムの自動車販売数で4位になり、単月で約2,500台の販売台数を記録しました。中国・台湾などの中華圏で成長するサプライヤの技術を活用していくことが多そうです。その真価はベトナム国外に出て、2022年までに現地販売が開始すると言われる米国市場でどうなるかが注目されています。

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参考文献:

1) キーワードは「LFP」、高成長見込まれる中国の車載電池市場, 東洋証券(リンクはこちら