米国の自動車研究評議会(UNITED STATES COUNCIL FOR AUTOMOTIVE RESEARCH LLC)の傘下活動する、USABC(The United States Advanced Battery Consortium LLC:米国の先進電池コンソーシアム)が、固体電池の製造技術を開発しているIon Storage Systemsに、技術実証に向けて487,310ドルを助成することを発表した。

スポンジライクセラミック電解質

Ion Storage Systemsは、米国メリーランド大学(UMD)のメリーランドエネルギーイノベーション機関からのスピンオフベンチャーだ。

これまでに米国エネルギー省ARPA-E・EERE、NASAから約1,200万ドルの資金提供を受けており、2019年にLG ChemicalのBattery Challengeコンテストの受賞者でもある。

Ion Storage Systemsが開発している固体電池は、負極にリチウム金属、正極には顧客に応じた材料を選定し、セパレータ・電解質には、独自に開発されたスポンジライクな薄いセラミックセパレータで構成される。

同社のセラミック電解質はガーネット型となっている。ガーネット型酸化物電解質は、YAG固体レーザーなどとも類似の構造であり、通常のガーネット構造では空隙となる酸素と8面体配位する箇所にリチウムが存在する。酸化物固体電解質の中でも、ガーネット型は電気伝導率が高いことがわかっており、リチウムイオン導電性に優れている。

USABCによる実証支援

今回のUSABCによる実証支援は、今年初めに開始された15か月の研究開発・実証プロジェクトとなっている。

この契約には50%のコストシェア(助成)が含まれており、Ion Storage Systemsの固体電池を、幅広く自動車分野のアプリケーションに適用できる可能性があることを実証する。

今回の契約はUSABCとIon Storage Systemsとの最初の契約となるという。

 

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ー 技術アナリストの目 -
Ion Storage Systemsはまだアーリーステージのベンチャー企業であり、現時点ではコインセルや3層のソフトバッテリーが試作されていることが確認できています。今回の15か月の研究開発・実証の中で、よりアプリケーション側で使うことを想定したサンプルセルの開発が実施されるものと想定されます。

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