デジタルフィットネス・コーチングを提供するベンチャー企業のWHOOPが、ソフトバンクビジョンファンド2をリードインベスターとして、シリーズFラウンドの資金調達を実施したことを、8月30日に発表した。資金調達額は200m$(約220億円)で、WHOOPの評価額は36億ドル(約3,950億円)になるという。

今回の調達ラウンドでは、他にもIVP、Cavu Ventures、Thursday Ventures、GP Bullhound、Accomplice、NextView Ventures、Animal CapitalなどのVCが参画している。

フィットネスとトレーニングに焦点を当てたユーザー体験

WHOOPは2012年に米国ボストンで設立されたベンチャー企業だ。

同社は独自に開発した腕に身に着けるタイプのウェアラブルデバイス(時計などの機能は無く、測定のみ)と、ユーザーが自分の状態をモニタリングすることができるアプリ、そしてコーチングプログラムを提供している。

これまでに資金調達した総額は確認できるだけでも400m$以上(約440億円)となっており、デジタルフィットネスの領域では突出している。

同社の特徴は、フィットネスとトレーニングに焦点を当てていることだ。

米国NFL(アメフト)やプロゴルファー、プロのマウンテンバイク世界チャンピオンなどもこのデバイスとアプリを使ってトレーニングを行っているとしており、こうしたプロ/アマのアスリートや、ジムやランニングなど運動習慣がある人(または本格的に作りたい人)を対象としている。

同社のデバイスは、毎日の回復、緊張、睡眠のバランスをとることで、最適なトレーニングを行い、パフォーマンスを向上させることができる、という考え方に基づいて設計されている。デバイスで計測された生体データを元に、ユーザーはアプリを通して、翌日希望のパフォーマンスレベルに到達するための必要な睡眠の量を提示し、どの程度リカバリーができているかを提示し、1日の緊張度合い・トレーニング強度がどの程度だったかを教えてくれる。

同社公開の動画への直リンク
  • 必要睡眠の量
  • リカバリー度合い
  • 緊張度合い・トレーニング強度

必要睡眠の量は、睡眠時間だけでなく、睡眠ステージ(深い睡眠、浅い睡眠、REMなど)も考慮される。WHOOP Sleep Coachという睡眠改善のためのデジタルコーチングでは、サーカディアンリズム(概日リズム)に合わせて、より高い一貫性を実現するためのおすすめのアクションが提示される。

そしてリカバリー度合いは、心拍変動(HRV)、安静時心拍数(RHR)、睡眠状態、呼吸数といったデータから判定される。毎日、現在の身体のリカバリ―度合いが0~100%でスコアリングされる。

緊張度合い・トレーニング強度は、1日の心拍数をモニタリングし、どの程度運動を行ったか、どの程度体が緊張していたか、などから判定される。

成長する月額30ドルのサブスクモデル

同社のターゲット層はあくまでアクティブな運動を行う人であり、その料金は決して安くはない。ハードウェア自体は無料であるが、月額30ドルというサブスクモデルであり、ユーザーの負担は1年通して利用すると3万円以上にもなる。

しかしそれでも、現在、同社のメンバーシップ会員数は急激に成長しているという。

「私たちは、過去12か月のWHOOPメンバーシップの急速な成長と、そのテクノロジーに対する追加の製品拡張によって特徴づけられています。」と同社は述べている。

同社には現在、500人以上の従業員が従事しており、過去1年間でおおよそ倍増している。WHOOPは2022年に、マサチューセッツ州ボストンに新しいグローバル本社を、そして世界中にもオフィスを開設し、1,000人を超えるチームメンバーを収容する計画を持つという。

 

同社HPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
ウェアラブルデバイスは、Fitbitなどの世界的に有名なブランドのデバイス以外で、フィットネス領域でマネタイズできる企業は非常に少なく、多くは医療機器領域に進出することになりますが、同社はフィットネスでマネタイズできている有望企業の1社です。ポイントはアスリートという、自身の身体状態をモニタリングし、トレーニングに活かしたいという強いモチベーションがある人に絞った機能設計とユーザー体験、そしてマーケティングとなっており、ニッチな市場でしっかりと価値が提供できていることにあります。

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