ブリヂストンの米国グループ会社であるBridgestone Americas(BSAM)が、車両管理ソリューションを展開するAzuga Holdingsを買収したことを発表した。買収の取得価額は、企業価値391m$(約428億円)をベースに、Azugaの運転資本等に係る調整後に確定するという。

今回の買収は2021年第3四半期中に完了する見込み。

現在の中計に沿ったソリューション事業の強化

ブリヂストンでは現在、中期事業計画(2021-2023)が進行している。

この中計では、「2050年サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供する会社へ」をビジョンとして掲げており、コア事業として従来のタイヤ事業を、そして成長事業としてソリューション事業を位置づけ、探索事業としてリサイクルやソフトロボティクスなどの新規領域への成長投資を行うとしている。

ブリヂストンは従来のタイヤ売りのビジネスをコアとしながらも、タイヤ・ゴム事業の知見をベースとしたソリューションという川下への展開を図っているのだ。

このソリューション事業で核としているのがフリートソリューションであり、これは2019年に買収したWebfleet Solutionsがベースとなって、欧州を中心にサービスを展開していた。さらには2021年6月にもブリヂストンは長距離トラック自動運転技術を開発するKodiak Roboticsにも少額出資をしている。今後、北米を中心に包括的なモビリティソリューションの展開を進めようとしているという背景がある。

北米での実績を元にデータ活用にも進出するAzuga

一方の今回ブリヂストンによって買収されたベンチャー企業のAzugaは、2012年に米国サンフランシスコのベイエリアで設立された企業だ。

AzugaはGPSトラッキング、テレマティクス、ドライバーモニタリングなどの最新技術を使ったフリート運行管理プラットフォームを北米で展開している。6,000を超える北米のフリートに提供しており、これまでの累計契約台数は約20万台であり、30億を超えるデータポイント(恐らくGPSのデータであると推察される)を保有しているという。

また直近では、同社が保有するビッグデータの活用やAIの開発にも力を入れている。

2021年3月にはコネクテッドカーのデータを分析するプラットフォームを開発している米国のベンチャー企業であるMobikitを、Azuga自身が買収している。Azugaが保有するドライバーのパフォーマンスデータを、Mobikitの機械学習アルゴリズムとシームレスに統合することで、Azugaのデータアウトプットを拡張し、保険会社にこれまで利用できなかった分析・洞察を提供することが目的となっている。

Azuga買収で世界100万台規模へ

ブリヂストンは、今回のAzuga買収で、過去買収したWebfleet Solutionsの80万台と、Azugaの20万台の契約台数を合計し、世界全体で100万台規模のフリート管理を行うことになる。

Webfleet Solutionsで培ったノウハウを北米でも水平展開し、Azugaの更なるスケールアップを狙っていく。

 

AzugaのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
タイヤメーカーという部材売りから、ソリューションという川下側へバリューチェーンを拡大するというのは大きなチャレンジであり、部材メーカーにとって参考になる部分が多いと思われます。現在ブリヂストンはソリューション事業の中で、タイヤセンサなどを活用した予測メンテナンス技術の実用化にも取り組んでいますが、今後こうした技術を媒介としてタイヤとフリートマネジメントが結びついてくると、更に戦略的に意義があるものになりそうです。

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