電気自動車向けのシリコン優勢アノードを使った、急速充電可能なリチウムイオン電池を開発しているイスラエルのStoreDotが、4680円筒形セルのプロトタイプで、10分で急速充電が可能であることを実証したと発表した。

メタロイドナノ粒子による第二世代セル

StoreDotは、負極にメタロイドナノ粒子(シリコンやスズなど)を使った次世代リチウムイオン電池を開発している。第一世代ではゲルマニウムを負極に使っていたが、高価であるため、現在第二世代でシリコンを使ったセルが開発中だ。

同社は今年中にサンプルセルの供給を開始する計画であることを以前に発表していた。
(技術の詳細については過去記事を参照)

参考:急速充電LIBを開発するStoreDotが量産化に向けて中国メーカーと提携強化

参考:イスラエルのStoreDotが5分で満充電する急速充電LIBのサンプル出荷を開始

(補足)上記の5分で満充電するLIBのサンプルとは、あくまで第一世代のもので、自動車用ではなく二輪車用の小型バッテリーであり、今年初めに発表されている。

4680円筒形セルで充電時間10分を達成

4680円筒形セルとは、直径46ミリメートル、長さ80ミリメートルの大型円筒形セルのことを指す。テスラがこれまでモデル3で搭載していた2170よりも一回り大きいサイズであり、現在、パナソニックが2022年以降での導入をするべく開発を進めている型でもある。

同社はこれまでパウチセルでの開発をしていたが、今回は大型円筒形セルということで、パウチでも円筒形でも急速充電のスペックを実証したことになる。

同社は、「当社のシリコン優勢XFCバッテリーセルの化学的性質は、変化する市場のニーズに合わせて適応可能であり、さまざまなパッケージ形式に適用できることを嬉しく思います。円筒形とポーチセルの両方のフォームファクターは、安全、信頼性、安定性を備えて設計されています。」と述べている。

今回の超高速充電円筒形セルの開発は、ソフトパウチと比較した場合、様々な課題を解決しなければならなかったという。例えば、4680円筒形セル形式では、より大きな内圧、ガス放出、および潜在的な漏れの回避を相殺するために、独自の化学的適応が必要であったと言及している。

StoreDotは、2024年の大量生産を目指して中国のパートナー企業EVE Energyとスケールアップしながら開発を進めている。

 


ー 技術アナリストの目 -
今回4680円筒形でも10分の急速充電が実証された、という発表でしたが、シリコンアノードはシリコン粒子の体積膨張による電極の破壊が課題であり、優れた充放電サイクルが実現できるか、というのが大きなポイントです。今回はその点に特に触れておらず、依然として技術開発の進捗は不透明な部分が大きいです。

【世界のシリコンアノード次世代LIBの技術動向に興味がある方】

世界のシリコンアノード次世代LIBの技術開発を行うベンチャー企業のロングリスト調査や、各社の技術開発動向、技術の特徴に関する動向調査などに興味がある方はこちらも参考。

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