産業用に特化した自動運転ソフトウェアを開発しているシリコンバレーベンチャーのCyngnが、8月にIPO申請の書類を提出し、Form S-1(※1)が9月2日に公開された。

※1 Form S-1は新規株式公開(IPO)を行うために、米証券取引委員会(SEC)に提出する証券登録届出書のこと1)

産業用特化の自動運転ソフトウェア

Cyngnは2009年に設立された、シリコンバレーのメンロパークに本社があるベンチャー企業だ。大手VCのアンドリーセンホロウィッツ(Andreessen Horowitz)やIndex Ventures、そしてクアルコムベンチャーズなどから出資を受けている。

元々はスマートフォン向けのGoogle Androidオペレーティングシステムを改善するためのOSとして開発されていたが、2017年に同社は事業をピボットし、自動運転市場向けのソフトウェアを開発するようになった。

特徴の1つは産業用に特化していることであり、鉱山向けや建設現場向けでの車両、マテハン・搬送用の低速車両などにおける、LiDAR・カメラ・レーダーなどの複数のセンサを組み合わせたセンサフュージョンによる、車両の制御を行うソフトウェアを開発している。また、同社のソフトウェアにはデータ分析、フリート管理、クラウド、接続などの主要なサポート技術も組みこまれている。そして2つ目の特徴は、他の多くの産業用車両の自動化プレーヤーが新規の車両を前提として開発をしているのに対し、同社のソフトウェアアプローチは既存の車両もレトロフィットで活用することができる点としている。

「何よりもまず、私たちが目標としている自動化は、率直に言って、人々が特に得意ではない、またはやりたくないことです。」と、同社シリアディレクターのBEN LANDEN氏は述べている。

ニューラルネットワークベースの同社の自動運転のためのソフトウェアの適用先として、特に直近、鉱山市場に注目しているという2)

実用化にはまだしばらく時間がかかる可能性

同社の目論見書を見ると、まだ売上がほとんど経っておらず、現状は研究開発に活動をフォーカスしている。ただし、すでに有料での顧客トライアル・パイロット展開は実施されており、2022年に顧客へのソフトウェアツールの販売を行うとしている。

ビジネスとしてスケールするのは、2024年に開始することを目標としている。

 

同社HPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
確かに産業向けの自動運転のためのソフトウェア(及び車両管理ツール)に特化しているプレーヤーというのはあまり業界でも数が多く無く、分野を狭い環境に限定することで、実用化までの時間軸を短くできる可能性がありますが、一方でビジネスとしてスケールするのは2024年からということで、まだ少し時間がかかりそうです。IPOにより約36m$を調達することを目指しているようですが、調達金額も小さく、あまりIPOで調達するメリットを感じないのですが、ひょっとすると、現在見えている範囲ではスモールスケールの事業であり、VC評価されにくいという側面があるのかもしれません。

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参考文献:

1) 金融情報サイト iFinance、会社・経営用語、Form S1(リンクはこちら

2) Covidが自律性をどのように変えたか, Cyngn Webサイト, インタビュー記事(リンクはこちら