Tulane大学の科学&エンジニアリング部門のMichael Naguib氏が率いるチームが研究している、MXeneについての論文が、ジャーナルのAdvanced Functional Materialsに掲載され、出版物の裏表紙に選ばれたことが同大学から発表された。

2次元ナノ材料MXeneとは

MXene(マキシンまたはメクセン)とは、2次元ナノ材料で前周期遷移金属(チタンや バナジウムなど)と軽元素(炭素または窒素)による複合原子層化合物の材料である。2011年に米ドレクセル大学の研究チームによって発表された、新しい材料であり、ポストグラフェンとして期待されている。

高エネルギ―密度を持つスーパーキャパシタ

Tulane大学の発表によると、Nagib氏のチームの研究は、充電時間を数時間から数分に短縮しつつ高エネルギー密度を持つスーパーキャパシタを実現する可能性のある発見だという。

その鍵を握るのが2次元ナノ材料のMXeneだ。

リチウムイオン電池は高容量の電気を蓄えることができる一方で、充放電時間はある程度の時間を要する。一方でスーパーキャパシタはアルミ電解コンデンサと二次電池の中間的な特徴を有するコンデンサであり、大きな電気容量は無い変わりに、ごく短時間での充放電を可能とする。

スーパーキャパシタはその特性から、メモリーのバックアップ電源、ハイブリッド電気自動車(HEV)内での回生ブレーキ、短期間のエネルギー貯蔵などの用途で使われている。

MXeneは、二次元構造を有しているため、層間にリチウムイオンを保持することができる。しかし、通常では水性電解質を使う場合、電位窓が狭いことからエネルギー密度が制限されてしまう。また、有機電解質と室温イオン液体(RTIL)では、より高い電位窓となり、高いエネルギー密度をもたらすことができるが、室温イオン液体のイオンのサイズが大きいため、MXeneの層間へのインターカレーション(イオンの吸収・脱離の動き)が妨げられ、やはりエネルギー密度が制限されてしまう。

Nagib氏の研究では、MXeneの層間のスペースを最適化して、より大きなイオンが入ることを可能にする新しい技術を開発した。

「ここでは、層間にくさびまたは柱(の機能を持つもの)を導入して層間の隙間を開き、イオンをMXene層間に蓄積できるようにして、非常に高いエネルギー密度と電力密度を実現しました」とNaguib氏は述べている。

スーパーキャパシタは、今後、家電製品やIoT機器、自動車など様々な用途で使われることが見込まれ、市場は成長していくことが期待されている。エネルギー密度の制約を打破できれば更に市場を拡げることができ、様々な大学研究機関で研究が進んでいる状況だ。

 


ー 技術アナリストの目 -
MXeneという新材料についての研究についての発表でした。MXeneはまだ工業的に供給している企業が限られ、日本では2020年に日本材料技研がサンプル供給を開始しています。まずは代表的なMXeneであるTi3C2の製法を確立したということですが、今後、電極材料や電磁波シールド材料などでの実用化が期待されます。

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参考文献:

1) 科学研究費助成事業、研究成果報告書、「改変メクセンの創製と空気電池電極への適用」、九州大学工学研究院、林教授(リンクはこちら

2) Engineering the Interlayer Spacing by Pre-Intercalation for High Performance Supercapacitor MXene Electrodes in Room Temperature Ionic Liquid, Volume31, Issue33, August 16 2021, https://doi.org/10.1002/adfm.202104007(リンクはこちら