イスラエルのコネクテッドカーのサイバーセキュリティ・分析プラットフォームを提供するベンチャー企業のUpstreamが、シリーズCで62m$(約68億円)の資金調達を実施したことが8月24日に発表された。

今回の資金調達ラウンドは、MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険をリードインベスターとして、新規投資家でI.D.I. Insurance、57 Stars’ NextGen Mobility Fund、La Maison Partnersが参画し、既存投資家ではGlilot Capital、Salesforce venture、Volvo Group Venture Capital、Nationwide、Delek US等が参画している。

重要性を増す自動車×サイバーセキュリティ

車両に備わる端末からネットワークに接続するコネクテッドカーは、実に2019年単年で世界で約3,000万台を超える販売台数となっている1)。そして、どの調査会社においても、コネクテッドカー市場は今後大きく成長することが見込まれている。

一方で、Ubiquitos AI Corporationの2019年の講演によると、SAE InternationalとSynopsys社が車載コンポーネント実装・評価に関わる593人のエンジニアを対象としたアンケートで、「サイバーセキュリティプラクティスがテクノロジーの変化に追いついていない」と答える人が84%、「全体の半分未満しかハードウェア、ソフトウェア、その他のテクノロジーの脆弱性テストを実施していない」と答える人が63%と、そのセキュリティに関する課題は大きい。

コネクテッドカー特化のソリューション

Upstream Securityは2017年創業のイスラエルのベンチャー企業だ。セキュリティの専門家によって立ち上げられた同社は、今回の資金調達も合わせると、これまでに累積で105m$(約115億円)もの資金を集めている※1。

※1 Crunchbaseなどのデータベースでは139m$となっているが、同社の公式なアナウンスでは105m$となっている。

2019年の調達ラウンドではAlliance Ventures(ルノー・日産・三菱連合のCVC)も出資をしており、その後セールスフォースのCVC、VolvoのCVCなど、様々なCVCが支援していることも特徴である。

Upstreamが提供しているのはコネクテッドカー向けのクラウドベースのサイバーセキュリティおよびデータ分析プラットフォームだ。このプラットフォームは、コネクテッドカーに保存されている大量のデータを利用し、専用のAI・機械学習技術を組み合わせて、高度なセキュリティ機能とデータ分析を実現する。同社のセキュリティソリューションは、現在数百万台規模の車両で利用されている。

なお、このAI・機械学習というのは同社の異常検出エンジンで活用されている。複数の機械学習(ML)モデルがあり、個々の車両、車両通信、モビリティサービスなどの広範な領域をカバーする。

Upstreamは今回調達した資金を活用して、コネクテッドカーにおけるデータ分析、保険テレマティクス、予測分析、ビジネスインテリジェンスの分野でサービスを拡大していくという。

 

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ー 技術アナリストの目 -
Upstreamのプラットフォームは、コネクテッドカーのセキュリティというのが第一の価値ですが、収集したデータを保険テレマティクスに活用したり、BIで活用するなどのデータ活用の領域まで手掛けていることがビジネスモデルの1つの特徴となっています。Upstreamが繋がる車両はまだ数百万台規模に留まりますが、世界では数千万台規模で毎年新しいコネクテッドカーが販売されています。今後コネクテッドカーのデータを誰が管理するのか、データプラットフォームの競争にもなってきそうですが、Upstreamはセキュリティ切り口で導入が可能なので、面白いポジショニングに感じます。

参考文献:

1) 富士経済プレスリリースより(リンクはこちら

2) 「CASE時代のコネクティッドカーのサイバーセキュリティの動向と対策」、Ubiquitos AI Corporationの2019年の講演(リンクはこちら