ナノチューブハイブリッド素材技術を開発している米国ベンチャー企業のCHASM Advanced Materialsが、シリーズCの資金調達ラウンドを実施し、15m$(約16.5億円)の資金調達を実施したことを発表した。

今回の資金調達は米国ボストンを拠点とするプライベートエクイティのWAVE Equity Partnersをリードインベスターとして、カーボンブラックの世界的大手企業であるBirla Carbonと、フィルム・合成繊維・不織布の大手企業であるSWM Internationalも出資者として参画している。

ナノチューブハイブリッドとは

CHASMは2005年に米国マサチューセッツ州で設立されたベンチャー企業だ。10年以上に渡り、カーボンナノチューブの材料開発と用途開拓を行ってきた企業で、2016年には同じくカーボンナノチューブ企業のSouth West Nanotechnologies(SWeNT)を買収した。買収した結果、高品質の数壁または単層のカーボンナノチューブ(SWCNT)の主要サプライヤーとなる。

2018年にシリーズAを実施したころには、プリンテッドエレクトロニクスのためのカーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド透明導電性フィルムの開発に注力。カーボンナノチューブのハイブリッド素材の開発とマーケティングに力を入れるようになった。

CHASMが開発したナノチューブハイブリッドとは、複合材料の一種で、単層カーボンナノチューブとカーボン・グラファイト・銀・銅などの別の素材を意図的に組み合わせ、新しい機能特性を得るというものである。

例えば、同社のナノチューブハイブリッド技術を使った製品としては、カーボンナノチューブ(CNT)とシルバーナノワイヤー(AgNW)のハイブリッドである「AgeNT」と呼ばれる透明導電性フィルム(TCF)材料があり、スマートフォンやタブレット用のタッチスクリーン、自動車内装のタッチセンサ、医療機器用のEMIシールド等に使われる。市場で現在使われているITOよりも導電性が高く、柔軟性に長けているという。

カーボンブラックとの複合材

またCHASMは今回の出資者でもあるカーボンブラック大手のBirla Carbonと共同開発を推進しており、カーボンブラックを使用したナノチューブハイブリッド素材「NTeC」を開発。

用途は高性能リチウムイオン電池や導電性塗料・コーティング、タイヤなどへの添加剤としての利用を見込む。

両社は、今後この戦略的パートナーシップを次の段階へ進め、特に電池用の導電性添加剤の用途において、NTeCの製造をスケールアップし、商業化を進めていくという。

スマートガラスアプリケーション向けにも

さらに、今回出資をした大手素材メーカーのSWM InternationalのエグゼクティブバイスプレジデントのTracey Peacock氏もこう述べている。

「プリンテッドエレクトロニクス向けのCHASMのナノチューブハイブリッドテクノロジープラットフォームと、高度に設計された樹脂ベースのフィルムを組み合わせることで、輸送、建設、軍事などのセグメントにわたるスマートガラスアプリケーションの幅広い可能性が開かれます。」

上記のように、今回の出資は共同開発を強力に推し進める、大手素材メーカーによる資本業務提携の意図が伺える内容となっている。同社は今回の資金調達により、今後商業化の準備を進めていくという。

 

CHASMのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
元々はCNT単体のサプライヤでしたが、現在は、単層CNTをベースにした複合材を開発しているベンチャー企業となっています。今回、大手素材メーカーのBirla CarbonとSWM Internationalが出資をしているというのはとても興味深く、ただの出資だけではなく共同開発を強力に推進していくという意図があるようです。商業化はニッチな用途から開始されると思いますが、どのようにスケールアップしていくのか注目したいと思います。

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