中国の自動運転ベンチャーであるWeRide(文远知行)が、中国初となる自動運転レベル4の配送バン「WeRide Robovan」を9月9日に発表した。プレスリリースではWeRideは都市物流業界の自動運転に参入したことを表明している(※1)。

※1 厳密には、下記記載の通り、7月にロジスティクス向け自動運転のMoonX.AIを買収しており、今回が都市物流に関する初めての動きという訳ではない。

物流領域を急速に強化

WeRideは自動運転レベル4のシステムを開発しており、広州を中心に、自動運転ロボバス・タクシーの実証を進めている。アライアンス・ベンチャーズ(日産・ルノー・三菱)も出資をしており、今年の5月にはシリーズCの調達ラウンドを行い、数百億円規模の資金を調達したことが明らかになっている。

参考:WeRide(文远知行)がシリーズCで数百億円規模の資金を調達

同社は最近、物流領域を急速に強化している。

7月には同じく中国の自動運転スタートアップMoonX.AIを買収した。MoonX.AIは2018年に深圳に設立されたベンチャー企業で、ロジスティクス業界を対象とした無人運転ソリューションを開発していた。

参考:WeRideがMoonX.AIを買収し、ロジスティクス分野を強化

江寧汽車(JMC)とZTO Expressとの協業

今回のWeRideの自動運転配送バンに関する発表は、こうした物流領域の取り組みを強化するものとして位置づけられそうだ。

WeRideは、中国の大手自動車メーカーである江寧汽車(JMC)、中国の大手特急配送会社であるZTO Expressと協力し、WeRide Robovanの量産と商品化を推進する。3社はそれぞれの専門知識・ノウハウを組み合わせ、Robovanの商用パイロット業務を共同で行う。WeRideとJMCが量産用モデルを設計するために連携し、ZTO Expressが将来的に車両を購入する。

今回発表された「WeRide Robovan」
画像クレジット:WeRide

このWeRide Robovanは同社における3つ目の自動運転製品であり、これでWeRideはロボタクシー、ミニロボバス、ロボバンというラインナップを保有することになる。WeRideのフルスタック自動運転レベル4の主要な機能を備え、都市道路上で、全天候で24時間体制の配送サービスを実現する。目指しているのは、完全に途切れの無い、ドライバーレスの物流サービスだ。

同社公開の動画への直リンク

WeRide CEOのTony Han氏はこう述べている。

「社会に役立つAD技術を現実に効果的に使用する必要があることを常に強調してきました。中国初のL4自動運転カーゴバン「ロボバン」の導入により、当社は、国内の都市物流の自動運転の新時代を迎えました。江寧汽車(JMC)とZTOエクスプレスの2つの主要プレーヤーと提携することで、自動運転乗用車の開発以来、WeRideが採用してきたコラボレーションの「トライアングルモデル」を継続しています。今後、都市にスマートモビリティとスマートロジスティクスの両方を提供することを目指しています。」

 


ー 技術アナリストの目 -
WeRideがMoonX.AIを買収した時の記事でも簡単にまとめていますが、自動運転企業がこぞって物流領域に参入しています。自動運転タクシーはややシーズアウト的な発想から来ており、あまり市場・ユーザーのペイン(課題)が薄い一方で、物流領域はEコマースやデリバリーサービスの成長や人手不足から、課題を解決するための手段として自動運転が貢献できることから、短期的にマネタイズしやすい領域として注目されているように思います。実際に自動運転配送ロボや商用トラックが、社会で使われていくのか、この1~2年で自動運転企業には結果が問われることになりそうです。

【世界の自動運転技術・配送ロボットに興味がある方】

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