アルツハイマー向けのデジタル治療技術を開発しているNeuroglee Therapeuticsが、シリーズAの調達ラウンドを実施し、10m$(約1.1億円)の資金調達を行ったことを発表した。

今回のラウンドのリードイベスタ―はOpenspace Venturesであり、シンガポールのファンドであるEDBIや、既存投資家のRaman Singh(Mundipharma元CEO)、Biofourmisの共同創業者Kuldeep Singh Rajput氏、Wendou Niu氏、製薬大手のエーザイも戦略的投資家として参画している。

軽度認知障害を対象としたデジタル治療

Neuroglee Therapeuticsは、アルツハイマーなどの神経変性疾患の患者を対象とした、パーソナライズされたエビデンスに基づくデジタル治療(DTx)・バーチャルケアソリューションを開発しているベンチャー企業だ。2020年にシンガポールで設立されたばかりの同社は、わずか1年程度でシリーズAまで進んでいることになる。

同社が開発しているのは、高度なバイオセンサーから取得される生体データ(デジタルバイオマーカー)を取得し、データを機械学習を使ったアルゴリズムで処理し、各患者の認知・身体的ニーズに合わせて治療を動的にパーソナライズするデジタル治療のシステムだ。

医者は通常の薬を処方するのと同じように、同社のシステムを処方し、患者は在宅での治療で利用する。

NeurogleeのCEOはこう述べている。

「現在、世界で5,000万人、そして米国で570万人のアルツハイマーの患者がいます。認知症の最も一般的な原因であるアルツハイマー病による軽度認知障害に最初に焦点を当てたことが、既知の治療法がなく、状態を治療するためのFDA承認薬がほんの一握りであることを考えると、当社のシステムは大きな市場ニーズを満たします。」

Mayoクリニックとも共同開発中

Neurogleeは、現在、MayoクリニックとNeuroglee ConnectTMというシステムを共同開発していることも明らかにした。このシステムは、Mayoクリニックが患者に提供している「HABIT」という10日間のエビデンスベースの認知行動療法プログラムに組み込まれる。

患者は自宅でこのシステムを通して、パーソナライズされたリアルタイムでの患者の状態管理と介入をサービスとして受けることができる。

神経疾患の新しいデジタル治療は、今後本格的に実用化することが期待され、自宅で患者の状態をモニタリング・治療できることから現在の技術トレンドの1つとなっている。他にも、アルツハイマー治療を行う電磁刺激デバイスを開発するNeuroem Therapeuticsなども技術開発を進めているが、今回のNeurogleeは認知行動療法である点が特徴的だ。

 

NeurogleeのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
アルツハイマーについては薬の分野も様々な研究開発されていますが、アルツハイマーの初期兆候の検知技術や、初期症状のデジタル治療、そしてより重度な患者向けの神経刺激治療デバイスの開発など、様々な技術が開発されています。Neurogleeのソリューションは中でも認知行動療法に基づいているため、症状の緩和・改善はより緩やかに、できるだけ薬などを使わない方法を取っていますが、効果のエビデンスを揃えるのにやや時間がかかりそうです。Mayoクリニックとすでに提携しているというのは大きな良材料でしょう。

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