中国のLiDARベンチャーのRobosenseは、同社が開発してきたMEMS LiDARの「RS-LiDAR-M1」の量産を開始し、納品を始めている。自動車メーカーにも納入をしており、同社は「世界で初めてのソリッドステートLiDARの大量生産」としている。

2021年6月の自動車メーカーへの生産開始(SOP)以来、10回以上のバッチでの自動車メーカーへの納品が完了している。

参考:中国のRoboSenseがMEMSソリッドステートLiDARの生産ライン立ち上げ

MEMS方式のLiDAR M1

Robosenseは以前からMEMS方式のLiDARの開発を続けてきた。CES2019と2020では銅製品でアワードも受賞している。

車載LiDARの全体像について理解したい人は以下の記事を参照。

参考:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~

同社によるとスペックは以下のようになっている。

  • 検出範囲    :150m(反射率10%時)
  • 検出精度    :±3cm(1sigma) 
  • FOV      :120°×25°(H×V)
  • 水平方向解像度 :0.2°(平均)
  • 点群密度    :~750,000pts/s (Single Return) 

同じくMEMS LiDARを開発しているAEyeやInnovizと比べると、検出距離とFOVのスペックはある程度の数値を達成しており、やや解像度は低いものの、他社に先駆けて量産化することに成功した。

また、ソフトウェアによるインテリジェント機能にも注力しており、運転シーンに応じてスキャニング方法を調整し、LiDARの知覚能力を向上させることができる。同社はこの機能を「GAZE」と呼んでいる。例えば高速道路のシーンではGAZEによって垂直解像度が向上し、遠くの物体を検知しやすくする。そして都市部ではフレームレートの更新を動的に向上させ、周囲の車両、歩行者、その他の障害物の動的な変化により迅速に対応できるようにする。

広州汽車集団傘下企業に納入

Robosenseは、広州汽車集団(GACグループ)が設立したGAC Aion New Energy Automobile(GAC Aion)のADiGO自律走行システムを搭載したAion LXで、M1 LiDARが採用されたことを今夏に発表した。

ADiGOはコネクテッド×自動運転を実現するシステムであり、相互接続されたエコシステムは、スマートファクトリー、自動操縦システム、IoTシステムを統合する。レベル3相当の自動運転機能を備えており、一部のクローズドシナリオでのL4パイロットの実行もサポートしているという。自動運転を実現するセンサーにはカメラ、ミリ波レーダー、LiDAR、高精度マップを利用しており、高速道路・都市高速道路のシーンでL3自動運転を実現する。

始まるMEMS LiDARの量産

なお、MEMS LiDARの量産化を狙うのはRobosenseだけではない。

Innovizは開発中のMEMS LiDARである「InnovizOne」は今年内の量産開始を行うと発表しており、現時点で具体的なタイムラインがまだ明かされていないが、年内の目標を取り下げてはいない。

また、AEyeの4SightMは現在サンプル出荷中となっている。

他社に先駆けて中距離検知性能(150m程度)のMEMS LiDARを量産化したRobosenseが、先行者として今後どのように市場で採用されていくのか注目だ。


ー 技術アナリストの目 -
MEMS LiDARに関しては、上記の通りRobosenseの今後の採用がどの程度進むのかが1つ目の注目ポイント、そしてInnovizがIAAモビリティでInnovizOneについての展示を行っているようですが、年末にかけていつ量産開始の発表がされるのかが2つ目の注目ポイントです。更にAEyeの4SightMやInnovizの次世代InnovizTwoの実用化が2022~23年あたりに出ると想定されますが、高速道路で要求される250m超えを実際に達成できるか、が3つ目の注目ポイントだと考えています。技術スペックとその採用動向については引き続き追いかけていきます。

【世界のLiDAR技術動向に興味がある方】

欧米・イスラエル・中国のLiDARベンチャー・サプライヤの網羅的なロングリスト調査や、主要LiDAR企業の技術開発動向、スペック動向調査などに興味がある方はこちらも参考。

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