2021年8月、スマートモビリティインフラストラクチャ管理のグローバルリーダーである米国企業のIteris, Inc.と、コネクテッドカーデータの新興企業であるWejoが提携したことを発表した。

1,100万台以上の車両データをIterisへ提供

Iterisは交差点や道路などに設置する各種センサーと、他メーカーのセンサーデータも含めてスマートモビリティに関連するデータを吸い上げ、データから混雑状態を解消したり、道路の安全性を最適化するような分析を行うプラットフォームを運営している。

今回の提携により、Iterisは、Wejoが保有する北米の1,100万台以上のリアルタイムの車両の移動データを、新規・既存顧客に提供することができるようになる。Iterisの北米全土の公共部門および商用顧客にデータを配信することになる。

Iterisはこれまで数百万台の車両からの車載センサーデータや、北米の交差点に配備されたIterisの市場をリードするスマートセンサーからの豊富なコンテキスト情報などをプラットフォーム上で扱っていた。Wejoとの提携によって、プラットフォームで扱うデータ量は膨大に増えることになる。

Wejoから得られるコネクテッドカーの移動データから得られるリアルタイムの交通情報と、IterisのClearMobility™クラウドによるAIと組み合わせて分析する。その結果、通勤者情報、交通緩和、道路ネットワーク管理、道路利用の調査などの分野で、これまでに無かったような洞察・分析が可能になるという。

WejoのCEOであるRichard Barlow氏はこう述べている。

「私たちの付加価値のある洞察は、Iterisの製品価値を強化・改善し、最終的には北米全体の安全性の向上と道路の混雑の軽減に貢献すると同時に、移動時間を短縮し、車の所有者に実質的により良い運転体験を提供します。」

GMが支援するWejo

今回のIterisの提携先であるコネクテッドカーデータのWejoは、自動車大手のゼネラルモーターズが出資をしているベンチャー企業だ。今年5月にはSPACで上場することも表明しており、第三四半期に取引は完了する見通しとなっている。

Wejoはコネクテッドカーからデータを吸い上げ、同社のプラットフォームであるWejo ADEPT™へデータを格納する。そしてプラットフォーム上でデータのクレンジングと標準化を行い、セキュリティとプライバシーを担保しながら、広告・カーシェア/レンタル・フリートマネジメント・テレマティクス保険・リモート診断などのサービス事業者へデータを提供する。

コンサルティングファームのマッキンゼーによる推計では、2030年までに新しく販売される自動車の95%はコネクテッドカーになると予想されており、コネクテッドカーから得られるデータの世界市場規模は2,500億ドルから4,000億ドルの間と推定されている1)。WejoやIterisのように、大量のデータを保有している企業同士が連携する例が出てきており、今後、さらにこうした企業のバリューチェーン上の重要性は増しそうだ。

 

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ー 技術アナリストの目 -
コネクテッドカー単体で見ても現在とは比べ物にならない程に、将来的に大量の自動車データが発生しますが、今回のInterisとWejoの提携が面白いのは、V2Xもすでに現時点で絡んできていることです。InterisのようなV2Xプラットフォーマーがコネクテッドカーデータと結びつくことで、より付加価値を高めるという点が新しく、日本のV2Xプレーヤー(商社や重工業企業など)はこうしたデータ側もバリューチェーン上抑えられないと、将来的に機器・システム売りでは付加価値が高まらない可能性があるでしょう。

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参考文献:

1) Unlocking the full life-cycle value from connected-car data, McKinsey & Company(リンクはこちら