高度なAIによるピッキング・仕分けロボットを開発している米国ベンチャー企業のAmbi RoboticsがシリーズAで26m$(約28億円)の資金調達を実施したことを発表した。

今回の出資は新規投資家のTiger Global Managementをリードインベスターとして、既存投資家のBow Capital、Vertex Ventures US、The House Fundらが参画している。

実用的な高速小包仕分けシステム

Ambi Roboticsは2018年に設立されたばかりのベンチャー企業だ。同社は今年3月にシード資金を調達してステルスモードから脱却し、急速に成長している。

世界中で市場が急拡大しているE-コマースの倉庫向けの高速小包仕分けシステムを開発している。ハンド部分に3つの吸盤が見て取れるが、ツールはアイテムに応じて変更することができる。センサーで物体形状やサイズを認識し、小包を高速で仕訳けていくが、同社のソリューションの1つであるAmbiKitは、商業生産環境で1分あたり最大60個のアイテムを正常に分類することができるという。

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強みはシミュレーションを活用した高速学習

同社の強みは、シミュレーションを活用した高速なAIアルゴリズム(ディープラーニングベース)の学習である。

通常、ピッキングロボットを顧客の倉庫で適切に稼働させるには、顧客が扱う小包の種類やサイズなどを元に、問題無く認識して仕訳けられるように学習させるプロセスが入る。同社は独自に構築したシミュレーションによる高速学習を使う。Ambiはこの特徴を「Simulation to Reality powered by AmbiOS」と表現する。

同社によると、この学習速度は他のロボットと比べて10,000倍速いと主張しており、学習はわずか数時間オーダーで完了する。学習が完了したピッキングロボットは、顧客の倉庫内で初日から数百万個の小包を仕分けすることができるという。

(補足)10,000倍速いというのは、恐らくシミュレーションを使わないで実環境やテストデータを与えて学習させるものと比較しているものと想定されるが、「正しいデータセットがそろっていれば」シミュレーションで数時間オーダーで学習できるようだ。

Pitney Bowesが採用

Pitney Bowesは、Eコマース向けの商品の受注から決済に至るまでの業務を受託サービスとして展開しているグローバル大手企業だ。

Pitney Bowesは1年間、自社の倉庫でAmbiの小包仕分けシステムであるAmbiSort Systemを試験運用し、良評価だったことから、今後5年間で米国内にあるEコマースハブに展開していくことを発表している。

Pitney Bowesは、米国の小包の量が2026年までにほぼ2倍になると予測しており、Eコマース領域では業務効率化・自動化が強く求められている。Ambiはそうした市場動向を追い風に、急速にスケールのための準備を進めている。

 

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ー 技術アナリストの目 -
Ambiの独自性が高いのは独自のシミュレーションによる学習プロセスであり、少なくともPitney Bowesにおいてはそれが上手くワークしたようです。通常、倉庫や工場におけるロボットの導入には、その前段階の導入準備にかなり時間がかかり、すでにその倉庫や工場で運用しているレガシーシステムとも繋ぐ必要があることがハードルになりますが、Ambiはレガシーシステムとも接続が可能で、特別な投資は不要としています。ステルスモードから脱した後一気に活動を加速しており、今後も期待できる1社でしょう。

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